Strange Days – ザ・ストラッツ (The Struts)

The-Struts-Strange-Days
  • リリース日:2020年10月16日
  • 個人評価:★★★★☆

若手ホープから本格派に成長、あとはブレイクするのみです !

ハードロックが既に1990年代には終わったジャンル(あくまでセールス的、世間一般のムーヴメントしてですが)となったことは今の音楽チャートを見ると納得せざるを得ない状況であり、チャートに入ってくるのは70,80年代から活動を続けているごく一部のヴェテラン・バンド、アーティストのみと言っても良い状況になってしまっています。
メタル系だとオジー・オズボーン, ジューダス・プリースト, アイアン・メイデン, メタリカ等、ハード・ロック系だとAC/DC, KISS, エアロスミス, ボン・ジョヴィ, ガンズ・アンド・ローゼス等、パッと思いつく限りは両手で数えられる程です。

年齢的にも60代,70代となっているそれらのバンド・アーティストはまだまだアルバムを出せばそれなりのセールスを出せて、全盛期を超えることは難しいですがある程度の納得のクオリティのものをリリースしています。
それらのバンドのライブを最近見てないですが、ライブをやれば盛況となり、来ているお客さんは私と同じ50代から上の年代が中心でしょうか。
私の周囲にも30代前半の人がそれらのバンドが好きだったりして話が盛り上がることはありますが、極々稀な事であるのは確かです。

そんな中でも若手バンドがてらいもなく伝統的なハードロックを今という時代にやっているのを見ると応援したくなります。
若い人でもハードロックってカッコ良いと思ってプレイすることはあっても、今の時代に通用するクリエイティビティを備えつつ、才能やセンスやキャラクターで一般的な注目を受けるには相当な魅力がないと受け入れられることはないでしょう。

そんなバンドの筆頭がマネスキンだったり、このザ・ストラッツだったりします。
マネスキンは、雑食性の高くなんでも飲み込んでいく音楽性や、イタリア語の響きの新鮮さ、バンド・メンバーのキャラクターや衣装面での個性が特出していますが、次のブレイクの期待株はじわじわと来ているこのザ・ストラッツです。特に日本のロックファンは期待度が高いのではないでしょうか。

ザ・ストラッツは、ロックの聖地であるイギリスはダービー出身で、中心人物であり、そのヴォーカル・スタイルとルックスから何かとクイーンのフレディ・マーキュリーと比較されますが、ヴォーカルのルーク・スピラーはこのレビュー投稿時、恐らく30代前半のようです。
2014年のハードロック・ファンにとっては嬉しくなるブライテスト・ホープの登場となったファースト・アルバム [Everybody Wants] でデビューし、この [Strange Days] が三作目のオリジナル・アルバムとなります。
母国イギリスでも11位まで食い込むこととなり、日本でも洋楽ファンの中では若手ロック・バンドとして確固たる地位を築きつつある、そんな状況です。

相変わらず元気の良いロックン・ロール・ナンバーが並んでいますが、1曲目のアルバム・タイトルにもなっている [Strange Days] はこのアルバムを象徴するナンバーになっています。

この年にリリースされたアルバムはコロナ禍にレコーディングされたものが多くあり、このアルバムもそのうちの一つです。アルバム1曲目にスロー・ナンバーで来るのはこのアルバムが初めてです。
「奇妙な日々」というタイトルはまさにコロナ禍の日々のことを言っており、現実となった奇妙な日々の真っ只中にいて混乱した状態になっているのですが、希望的なメロディに乗って、その頃の日々の様子が歌われていて、歌詞自体は決して楽観的ではないのですが、奇妙な今の日々の先にはきっと良い日が来るだろうという願いのようなものが曲から感じられます。
このスロー・ナンバーからの始まりが、1stヴァースからグッとくる歌詞も含めてメロディアスで今までと違う掴み方で引き込んでいきます。ヴォーカルのルークとロビー・ウィリアムズとの掛け合いがナイスで曲をさらに盛り上げてます。

そんなコロナ禍でのレコーディングを含めて [U discovermusic.jp] ではこのバンドを紹介するには一番相応しい音楽評論家の増田勇一さんのバンドのインタビューがアップされているのでこちらの閲覧も推薦します。

2020年10月16日に発売となり、ザ・ストラッツの3枚目のアルバムであり、自身最高位となる全英アルバムチャート11位を記録した 『Strange Days(ストレンジ・デイズ)』。このアルバムについてヴォーカルのルーク・スピラー、そしてギターのアダム・スラックとのオフィシャル・インタビューが到着。

ザ・ストラッツ『Strange Days』インタビュー:コロナ禍で豪華ゲストが参加した作品が出来るまで

2曲目の [All Dressed Up (With Nowhere to Go)] もコロナ禍を想起させる歌詞になっています。

[But in this lockdown, babe, I cannot go out] 「このロックダウンの中、俺は出ていけないよ。」
[All Revved Up with Nowhere to go] 「どこにもいけない状態でエンジン全開だよ。」

と、ゴキゲンなロック・ナンバーなんですが、どこかもどかしい歌詞がちょっとアンマッチでそこが逆にこの曲の面白さになってます。

3曲目のキッスのカバー [Do You Love Me] は意外なところを突いてきますが、原曲に忠実だけど、流石に元気の良さと今っぽいアップデート感はザ・ストラッツならではで飛び抜けてます。

その他、中盤の4~7曲目もいかにもブリティッシュ・ロックの子孫らしいシブさも匂わせるロック・ナンバーとなっていて、このバンドが力量がさらに磨かれて本物に成長していることを感じさせます。
4曲目のデフ・レパードのフィルとジョーとの共演、5曲目のトム・モレロとの重い感じの客演もしっかりゲストとバンドの良さが出てます。
ストラッツの色気を活かした伝統的とも言えるロック・ナンバーが続いた後にアルバム一番ポップなナンバーと言える8曲目の [Another Hit of Showmanship] です。こんなポップ・サイドの曲も生かしてもっとブレイクしていって欲しいものです。

リズムの勢いのある [Can’t Sleep] でロックン・ロール・パーティーは終わり、ラスト10曲目の [Am I Talking to The Champagne (Or Talking to You)] でアルバムはクロージングするのですが、この曲がかなりカッコ良い仕上がりです!
サックスとブルージーなギターが交差する間奏・ソロパートがグッときて、スロー・ナンバーなのですが、このバンドの若さと、成熟と経験を増したことによる渋さが同居したような何とも言えないあでと熱さがかなりグッときます。
そしてやっぱりルークのヴォーカルが曲の持つ雰囲気をより高めてくれてます。持って生まれた声の良さと表現力が磨かれてきていいですね。
始めとラストにスロー・チューンを配置し、その間はロックナンバーを挟み込むという曲順もかなり功を奏してます。

このアルバムを聴いていると持前の個性と若さ、バンドが力をつけてきたことによる色気と成熟度が感じられ、爆発前のマグマのようなフツフツと煮えたぎっている感じを抱かざるを得ません。
ここからもう一歩先に踏み込んだら次はとんでもないアルバムを作ってくれるのではないかという期待感で一杯になります。

マネスキンは往年のロックに、ダンスもヒップ・ホップも貪欲に飲み込んでいく柔軟性で今を代表するロック・バンドになりましたが、キャラクターの魅力という意味では負けてないザ・ストラッツは、クロスオーバーとかではなく、あくまで伝統的なロックを良い意味で現代にアップデートさせて盛り上げていく、もう一方のスーパー・バンドになって欲しいです。
ルークのヴォーカル・スタイルもフレディに似ているという魅力だけにもう留まっておらず、このアルバムを聞くとストーンズのように曲と艶やかと色気が魅力のブリティッシュ・ロックの現在の形を作っていってくれるのではないかと期待しています。

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