- 2020年10月2日
- 個人評価:★★★★
2020年、バンドにとって節目のアルバム
記念すべき? 20件目の投稿は、ボン・ジョヴィの2020年のアルバム [2020] です。
80年代のハード・ロック/ヘヴィ・メタルブームに乗って、というよりもその流れを作ったバンドであり、彗星の如く現れてデビュー当時からスターになることを宿命として背負いながら期待に応え、1986年にリリースされた3枚目のアルバム [Slippery When Wet] が世界的に大ブレイクし、正に天下を取ったバンドです。
その後はメンバー交代等の紆余曲折はありましたが、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの器に収まらず、今やアメリカを代表する世界の大物ロック・バンドとなったことは周知の通りです。
2018年には、その名誉に意義があるものなのか疑問点があるのですが、ロック界では有名な [ロックの殿堂] 入りを果たしました。
私のように80年代中頃から洋楽を聴きだし、当時、当然のように刺激のあるハードな物を求めていったリスナーには入口となったバンドであり、ドンピシャで思い入れが強く、自分の人生にとってもかけがえのなく大切なバンドです。
このバンドの魅力はなんといっても曲の良さ、ジョン・ボン・ジョヴィの容姿を含めたキャラクターと決してレンジが広かったり綺麗な声とはいえませんが、誠実で情熱的なヴォーカルと、バンドとしての見栄えの良さでしょう。
ジョンも既に60歳を超えてますが本当に良い歳の取り方をしていて、白髪をあえて隠してないのですがPVを見ても年相応にカッコ良く、若い頃はルックスに魅力は感じるような事はなかったですが、元がイケメンということもありますが、私自身が取るにつれて、今のジョンの方が男としても人としても憧れる存在になっています。
1990年代中半から2000年代後半の約10年ちょっとは私の洋楽リスナー歴が空白だった期間でしたが、ボン・ジョヴィのアルバムはかろうじてレンタルしたりして聴きましたが、1,2回程度しか聞いていないものもあります。
(といっても[Crash]と[Bounce]位ですが)
2005年の [Have A Nice Day] からは「やっぱボン・ジョヴィ好きだ~」と感じて、それ以降は再熱して聴き続けてます。そういう意味では歴史あるバンドの中では、数少ないリアルタイムでオリジナル・アルバムを全て聴いているバンドです。
いわく付きの茶封筒のようなそっけないジャケットである 2015年の [Burning Bridges] も個人的には捨てアルバムだとは思っておらず、結構良い曲入っていると感じています。
前置き長くなると過去アルバムのコメントが多くなってしまうので、その辺りは的確に丁寧に解説してもらえる以下のサイトが素晴らしいです。
そうだ、ボン・ジョヴィのアルバムをランキングにしてみよう、と思ったのだが、少し考えるとあまり意味がないことに気がついた。
ボン・ジョヴィ全18作品解説&ランキング完全版(2021年時点)
ボン・ジョヴィのアルバムはほぼ全てが傑作か名作と呼べる出来だからだ。もちろん中でも傑出した作品と、全体的にいいよね、という作品くらいの差はあるのだが、これは聴いてもしょうがないよ、というアルバムはほぼ無い。
なので、好きなら全部聴く価値はある、という結論にしかならないのだが、聴く順番の参考程度に、ランキングにしてみた。
さて、本題のアルバム [2020] は15作目のオリジナル・アルバムとなります。
ボン・ジョヴィにとっても、数字をタイトルとしたアルバムは初めてであり、その数字はアルバムのリリース年を冠したものとなりました。
これは2020年に大統領選が行われることから取られたタイトルということで、当初は2020年5月15日にリリースされる予定でしたが、コロナ・パンデミックを受けて延期となり、そのパンデミックとアフリカ系アメリカ人男性への警察官暴行事件を受けて、それぞれ [Do What You Can]と[American Reckoning] の2曲を新たにレコーディングされています。
代わりに [Luv Can] と [Shine] の2曲がボーナス・トラックとして本編後に収録され、結局、2020年10月2日にリリースされています。
アフリカ系アメリカ人差別事件は、米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日にアフリカ系アメリカ人男性が警官に拘束される際に、「息が出来ない」と訴え続けながらも地面に押さえ続けられ死亡したことが大きな波紋を呼んだ社会的事件を指しています。
“2020”というタイトルをアルバムに冠するのであれば、正にこの2つの事件は避けて通れない出来事であり、この2曲の追加がアルバム全体のイメージを際立たせることになります。
1曲目の [Limitless] は当初の5月のリリース前の先行シングルとして公開されたいた既曲であり、[Wake Up, everybody wakeup !] というフレーズから、人生はリミットレス、危険を冒してでも苦境の中から這い上がろうという力強いメッセージを、期せずしてパンデミック時期の人々を勇気づける内容になっています。
ボン・ジョヴィのアルバム1曲目に相応しくフックが魅力的であり、決して楽観的になり過ぎずに、聴くものに元気を与えるシンプルなメッセージのロック・ナンバーです。
2曲目の [Do What You Can]は パンデミック、ロックダウンをテーマにした曲です。
正にコロナが一番世界に恐怖を与えていた2020年初頭の状況を歌にしており、歌にも歌われているように当然この頃はワクチンも出来てなく、感染を避けるには周囲との接触を避けるしかない時でした。コロナが影響を及ぼすアメリカの酷い状況を歌いつつ、今、やるべきことをやろう、祈りではなく、届けたい想いなんだ(歌詞では、[ This ain’t my prayer, it’s just a thought I’m wanting to send] と歌われます)と、ボン・ジョヴィらしい希望的なメロディに乗せて歌われるメッセージ・ソングです。
3曲目の [America Reckoning] は前述のアフリカ系アメリカ人男性が警官の暴行により亡くなった事件が2番目のヴァースに使われ、生きて声を上げていくことが曲のタイトルになっているアメリカの受ける報いに繋がるということをアコースティック調の演奏で歌われています。
6曲目の [Let It Rain] もボン・ジョヴィらしい力強さを感じるナンバーになっています。最近の作品はジョンのソロ・アルバム的な側面があるのは否めないのですが、中期頃から続くバンド・サウンドを思い出させる若々しさを感じる曲になっています。
本編のラストとなる10曲目の [Unbroken] は、2019年リリースのシングルであり、戦争により精神的な傷を負った戦士の半生を語るストーリーテリングな曲となっています。
この曲の歌詞については、[OTOKAKE] のサイトで深く掘り下げて詳しい解説付きで紹介されており、歌詞のストーリーと曲の背景がわかります。
Unbrokenは2019年11月発売のボンジョビのシングル曲で、PTSDに苦しむ退役軍人のドキュメンタリー映画のために作成されました。苦しみながらも再び兵士の道へ進むことを決意した主人公の葛藤が描かれています。なぜ同じ道を進むのか、また「Unbroken」という願いに込められた真意について解説していきます。
Bon Jovi【Unbroken】歌詞和訳&意味解説!なぜ同じ道を行く?願いに込められた真意とは
個人的には、1,2曲目が特出したアルバムではありますが、大統領選があることから”2020″というタイトルが冠せられましたが、決して政治的な意味を持つ曲が並んでいる訳ではなく、アーティスト・ロック・シンガー・シンガー・ソング・ライター、そして、60歳を超えた一人の男であるジョンから、今まさにその時に起きている事への思い・家族・宗教をテーマに歌われおり、パーソナルな恋愛についての曲は少なくなっています。
2020年という時代にリリースされた作品という象徴的なアルバムという程でもないかも知れませんが、ファンにとっては、ギタリストのリッチー・サンボラとの決別、長年在籍したレコード会社であるマーキュリーからの移籍といったバンドにとって大きな変化に区切りをつけ、これから先の活動への意志を感じさせる作品となっていると思います。
昔からのファンとしては、リッチーの艶のあるギターが聴けなくなってしまっていることが未だに寂しさを感じますが、ジョンのヴォーカルを前面に打ち出した手堅いバンド・サウンドでまとまっているアルバムになっていると思います。
個人評価は、2曲目の [Do What You Can] この年の自分にとっての神曲となったことから”★”を追加しています。
最後にこのアルバムについてのジョンのロング・インタビューが掲載されたローリングストーンのサイトの紹介です。アルバムを数回聴いた後に読んでみることをお勧めします。
ボン・ジョヴィが通算15枚目のニューアルバム『2020』を10月2日に発表した。アメリカ大統領選が行われる本年の西暦をタイトルとした本作は、当初5月にリリース予定だったが一旦延期し、新型コロナウイルスの感染拡大やブラック・ライヴス・マターなど社会的問題と向き合いながら、ソングライティングの幅広さと深みが際立つアルバムに仕上げられた。かつてなくシビアだった制作背景を、リーダーのジョン・ボン・ジョヴィが明かす。
ジョン・ボン・ジョヴィが語る、2020年のアメリカと白人であることの葛藤
ビッグ・ネームになろうとも、歳を重ねる度にアーティストとして、人として、歌いたいことが枯渇しないどころか、表現力の幅を広げ、多くのビッグ・ネームのようにオリジナル・アルバムは数年に一度そこそこにそこそこのものをリリースしてライブで稼ぐというスタンスではなく、コンスタントにオリジナル・アルバムを出し続けて精力的な創作活動を続けていくジョンを筆頭とするボン・ジョヴィの活躍を今後も何年も見ていきたいです。
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