- リリース日:2020年1月10日
- 個人評価:★★★★
正統派歌姫の堅実な成長
男性ファンにとって、女性アーティストというのは特別な思い入れをもってしまう存在でして、私にとってこのセレーナ・ゴメスさんもその一人です。
メキシコ人の父親とイタリア系アメリカ人の母親の元にアメリカはテキサス州で生まれたとのことですが、エキゾチックな顔立ちながらもキュートで笑顔が可愛い方です。
彼女ももう30歳となり、若手アイドルというよりもセレブな大人の女性へと成長しています。
彼女のドラマや映画等を隈なく見て、情報を逐一追っかけるという程ではないですが、なんとなく新作がリリースされると好んで聴いている女性アーティストです。
ちょうど彼女を知ったのが、[スターズ・ダンス(Stars Dance)]という彼女にとって4枚目のアルバムからで、元気でポップなダンスミュージックが当時の彼女の健康的なイメージとマッチしており聴いてて楽しい気分になるアルバムでした。
後追いで聴いたその前の2011年リリースのThe Scene とのバンド名義のポップ・ロック寄りのアルバム [ホエン・ザ・サン・ゴーズ・ダウン(When the Sun Goes Down)]収録の[Who Says]という曲もスーパー・ポジティブな元気がもらえる名曲で、その他にもメロディアスで明るい曲が満載なのでキーボード中心ながらもアメリカン・ポップ・ロックファンにはおすすめのアルバムです。
次の大胆なセミ・ヌードのジャケットが印象的な2015年リリースの前作[リバイバル (Rivival)]では、しっかり大人っぽいヴォーカルになり、力強いダンスビートから美麗なバラードまで幅広い曲を歌いこなし、アーティストとして成長が感じられました。
既に時代の流れに乗りポップロックからダンス・サウンドに転換し、寂しさも感じましたが、ダンス・エレクトロ全盛の時代の流れもあり、やむを得ない変化だと思いました。
それから5年ぶりのリリースとなったのがこの6作目の[レア(Rare)]です。
私が聴いたのは、[boyfriend],[souvenir]等が追加され全17曲収録されたスペシャル・エディションですが、前作のサウンドを継承しつつも、今まで以上にシンプルでクールなトラックに印象的なフックが絡み、どの曲も2~3分というという短めの曲が並びます。
ラヴ・ソング中心ですが、セレーナのヴォーカルはさらに大人っぽさを増してますが、クール過ぎず、セクシー過ぎず、主張しすぎない優しいヴォーカルが印象的で、セレーナらしい作品となっています。
BGM的にさらっとリラックスして聴ける内容にもなっており、疲れてる時とか、ちょっとブルーな気分な時に聴くと気持ちがフワッと軽くしてくれるアルバムです。
とはいいつつも、30歳の彼女のプライベートで赤裸々な歌詞が歌われており、特に話題となったリード・シングルの [Lose You To Love Me] はティーンエイジャー時代から付き合っていたジャスティン・ビーバーとの失恋ソングのようです。
あまり、その辺りのセレブ同士の恋愛にとりわけ興味はないのですが、タイトル直訳の[自分を愛するためにあなたを失う]という意思のある言葉通り、彼への思い出とともに、過去の自分とも決別するような凛とした意思が感じられます。
セカンド・シングルとなった [Look At Her Now] も失恋ソングながらも前を向いて進んでいくという、自分自身だけでなくファンにメッセージを伝えるような歌詞を、シンプルながらも力強さを感じるトラックに乗せて歌われているのが印象的です。
サード・シングルの [Rare] は、セレーナの美しさを引き出された色彩豊かなPVが秀逸な明るいながらもミステリアスな雰囲気を持つ曲となってます。
個人的に好きな曲は、このアルバムの中で唯一4分以上のトラックである Kid Cudi というラッパーとコラボした少しもの悲しげなトーンのコーラスが印象的で不思議な浮遊感を持つ[Sweeter Place]です。
その他にもこのアルバムには別れを歌ったラヴ・ソングが多いですが、彼女のパーソナルで飾らない感情が込められた歌詞が多く、聴き心地が良いながらも心に引っかかる佳曲が詰まった良作となっています。
今のポップ・アイコンである女性シンガーは、圧倒的な歌唱力や超個性的だったりセクシャリティを打ち出したビジュアルや、どぎつい歌詞を売りにした人達が話題をさらっていますが、セレーナのように少し控えめながらも、自分自身を理解し、等身大のパーソナルな歌を歌う歌姫も確実なファンベースを築いて活躍していってもらいたいです。
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