- リリース日:2021年3月19日
- 個人評価:★★★★
やっぱりこれは新感覚ロックの決定版ではないでしょうか
今回は2021年にリリースされたマネスキン (Maneskin)の2枚目のオリジナル・アルバムの [テアトロ・ディーラ-Vol.1] (Teatro d’ira-Vol. 1)を紹介します。
アーティスト紹介
マネスキン (Maneskin)はイタリアの2016年に結成されたロック・バンドです。
バンド名の[Maneskin]は「月光」(デンマーク語)の意味ですね。英語だと[Moonlight]でしょうか。
まさに「今」を代表する時のグループをロック・バンドと堂々と言えるのは昔からのロック・ファンとしては嬉しい限りです。
ブレイクのきっかけは多くのメディアで語られているようにイタリア代表としてユーロビジョンソングコンテスト2021に出場し優勝したことでしょう。
欧州の放送連合が開催しているコンテストなので日本では馴染みがないコンテストですが、1956年の第1回大会以降毎年開催されており、世界的に見ても最長寿テレビ音楽コンペティションであり、視聴者の数も1億人から6億人程度と見積もられているようです。
なんだかんだ言ってもどこの国でもテレビの影響は大きいようです。
ざっと優勝者リストを見てみると、マネスキン以前に世界的に有名になった馴染みのあるアーティストは、ABBA / セリーヌ・ディオン位でして、必ずしもこのコンテストで優勝することが世界的な成功を収めることではないことがわかります。
懐かしカトリーナ・アンド・ザ・ウェイヴス(大ヒットした80年代以降に優勝)や、メタル系のローディ等も優勝しているようです。
そんなチャンスを活かして優勝以降、しっかり世界に旋風を巻き起こしており、一般的に話題の少ない洋楽ロック・シーンで、世界的にも日本でも、2021年に大ブレイクし話題をかっさらったのがこのマネスキンです。
当然、私もロック界のニュースターとしてアルバムは聴きました。
アルバム・インプレッション
ちなみにアルバム・タイトルの[Teatro d’ira]はイタリア語で「怒りの劇場」を意味します。
7曲入りのファーストEP [Chosen]や、セカンド・アルバムの[iL ballo delta vita]もそうですが、今作もパンクやグラムやハード・ロックはもとより、現在のダンス・R&B・ソウルミュージックを通過した若い世代のロックバンドです。
そしてメンバー全員、2023年時、20代前半です。
結構インタビューをみたりすると、レッド・ツェッペリン等の古典ハード・ロックから、レッチリ、アークティック・モンキーズ等の2000年代以降のインディ・ロックもしっかり聴いてきたりしているようで、変に過去のバンドのスタイルを意識せずに、ヒップホップやダンスやファンクのビート感が完全に自然に消化されていながらも、ロック・バンドとしてもストレートすぎるくらいストレートな佇まいと曲です。
ルックスが良いだけでなく、70年代とのグラムとも当然80年代のハード・ロック勢とは違う奇抜さ・過激さとスタイリッシュさを備えているところも魅力です。
このようなノン・ジャンルなロック・バンドは英語がネイティブな国では普通に存在したのかと想うのですが、ロックなら英語だぜ、という前時代的なこだわりが一切なく、イタリア語というのがすごく新鮮で、結構、ロックらしいロックを避けようとするバンドが多い中、本人達がロックをやることに何の衒いや迷いがなく、クロス・オーバーしていてもロック・バンドという芯が一本しっかり通っているのが潔いです。
そしてしっかり音が若い!と感じるのが特徴です。
仮にヴィジュアルや経歴を見ず、先入観が無かったとしても、一聴してそう感じるのではないでしょうか。
ジャンル分けに意味がないのは分かっているのですが、今時のバンドは、インディ・ロックとかオルタナディブ・ロックとか何とかロックとかいう言葉でロックの中でもジャンル分けされるのが常ですが、マネスキンに関しては”ロック・バンド”という言葉しか浮かびません。オルタナとかいうのが野暮な位にストレートでありながら感覚が新しいです。
もしかしたらいそうでいなかったロック・バンドがここになって出てきたという感じました。
私は洋楽を聴くときは、歌詞を少しでも理解したいという思いで、何とかわからないながらもネットで有志が和訳しているサイトやGoogle翻訳で曲を検索して表示された歌詞を日本語変換して聴くことが多いのですが、生じっか英詞を聴き慣れていることと多少は英語を理解しているもあり、翻訳が入り込み易く、シンガーがどの部分を歌っているのかが理解しやすいので、英詞だと歌詞が追いやすいのですが、このマネスキンは殆どの曲がイタリア語なのでさすがにさっぱり理解できません。
何を歌っているかなんて途中でどうでもよくなってきて、訳詞を見る気にもなりません。
それゆえにこのバンドは聴く者に感覚的にロックを体現させる作用があるように思えます。
このバンドのアルバムはコンパクトに30分弱というのが一気に聞き通しやすくて良いですね。
ボリュームよりも質と勢い勝負です。
英詞の曲もあるのですが、イタリアなまりかネイティブが英語で歌うのとはちょっと違う感覚があります。
[I WANNA BE YOUR SLAVE]とか[FOR YOUR LOVE]のような英詞の曲も英語で歌っているような感じが今ひとつしなく、音と歌詞の語感を感覚的に聴く曲になってます。
そんな騒がれようのマネスキンですが、1曲目の[ZITTI E BUONI]は古典的なロックの影響とその未来を感じるような突き抜けた曲です。これがユーロビジョンソングコンテスト優勝曲です。
2曲目の [CRALINE]はバラードかと思いきや、不安を抱える女性に歌いかける歌詞のようです。
日本人が感じるイタリアの哀愁感漂うスローチューンです。
5曲目の [IN NOME DEL PADRE] はビートを強調したロックナンバーかと思いきや、後半は愁いのあるギターソロが絡んできて、おっと、となる展開がカッコ良いですね。ハード・ロックの様式美に則っているかと思いきや本人達が意識していないのか一筋縄ではないです。
8曲目の[VENT’ANNI]なんかは20歳になった今の決意なんかが歌われているようなスローチューンです。
実際にダンサブルだったりファンキーなビートや、ラップぽいところもある歌で全体的に明るいイメージはあるのですが、曲は意外と哀愁味を帯びた感が強く、歌詞まで聴き込めてないですが、真面目な真っすぐな面もあり、イタリア出身若手というスタイリッシュさ・イタリア語の歌詞の乗せ方というところがこのバンドのオリジナリティを聴く人に喚起させているような気がします。
EPとセカンド・アルバムはその片鱗を窺わせましたが、このアルバムでしっかり世界中にアピールしました。
ヨーロッパではかなりの国でチャートの上位に食い込んでいます。
意外にもロックが盛り上がっているイギリスではもうちょいといった感じです。やっぱりイギリスは自国とアメリカの一部のイギリス人にもアピールできるバンドが強いですね。アメリカではビルボードのワールド200チャートの上位につけています。
恐らくこの先の何年かをこのバンドがロック界どころかグローバル・ミュージック・シーンのトップとして君臨していくのでしょう。
参考サイト
このアルバムとマネスキンの経歴概要とバンドの魅力を音楽レヴューサイトの[MiKiKi]がコンパクトにまとめてくれています。
その他にもさすがに読めないくらい多くの人が感想・レビューがネットに上がっているので見比べてみるのも良いでしょう。
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