Plastic Hearts (Apple Music Backyard Sessions Edition) – マイリー・サイラス (Miley Syrus)

Plastic_Hearts-Miley_Syrus
  • リリース日:2020年11月27日
  • 個人評価:★★★☆

【輸入盤CD】Miley Cyrus / Plastic Hearts【K2020/11/27発売】(マイリー・サイラス)

価格:2,090円
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2023年大ブレイク前の予兆を感じさせる作品です。

この投稿を書いている2023年の春時点では[Flowers (フラワーズ)] が世界的にチャートを席巻していて、今年のナンバー・ワン・シングルになるんではないかという勢いで、今やアイドル人気やお騒がせセレブ人気?ではない真のブレイクの真っ只中にいます。
今回は、このブレイクの予兆となったと言えるであろうマイリーのアーティストの魅力を伝えきっている前作が素晴らしかったので紹介です。
2020年にリリースされたマイリー・サイラス(Miley Syrus)の7枚目のアルバムの[Plastic Hearts ((プラスティック・ハーツ)] です。

彼女の作品は、2009年のEP(ミニ・アルバム) [タイム・オブ・アワ・ライヴス (The Time of Our Lives)] が当時大ヒットし、今でも彼女の代表曲となっている [パーティー・イン・ザ・U.S.A.(Party In The U.S.A.)] と [ザ・クライム (The Climb)] が収録されていることもあり、当時大好きで良く聴いてました。この時期は確か日本でもかなりヒットしていてEP前のセカンド・アルバム [Break out (ブレイク・アウト)] は当時のオリコン・アルバム・チャートにのトップ・テンに入る程でした。

前述の2曲は神曲で、 [パーティー・イン・ザ・U.S.A.] は彼女がまだ10代の若々しさと元気さの象徴のような曲であり、ヒップ・ホップやダンス的要素をフィーチャーしながらも陽気で元気が出るポップ・ロック・ソングですし、[ザ・クライム]は、マイリーのハスキー・ヴォイスを活かした感動的なロック・バラードです。どちらもとメロディと元気な歌声が素敵でした。

個人的にはマイリーとテイラー・スウィフトは、デビューが同時期であったことと、テイラーがカントリー・シンガーとしてデビューしたこと、マイリーの父親がカントリー界のスターであるビリー・レイ・サイラスであること等から何かと比べてしまい、アイドルからセクシー路線への急な転換と私生活のお騒がせ度で、やり過ぎ感が強いマイリーには興味を失っていました。

今作を聴いて特に感じたのが、二人ともそれぞれがアーティストとしての個性を築いて活動しているということがはっきりと分かりました。
テイラーがカントリー・ミュージックの歌姫としてデビューし、エレクトロ・ダンスを取り入れてカントリーの枠から飛び出して、2020年にリリースされたアコースティック色が強いアルバムでは詩的でストーリー色が強い歌詞と、サウンドもオルタナティブ路線に踏み込んでいったのに対して、マイリーがディズニー・チャンネルのアイドルとしてデビューし、現代的なエレクトロ・ダンスを取り入れつつも、ジャンルに拘らずに作品毎にスタイルを変えてチャレンジを続けつつも持ち前のハスキー・ヴォイスがフィットするポップ・ロック路線を進んで成長していってました。

ここ何作かのマイリーのアルバムは未聴でしたが、この[Plastic Hearts ((プラスティック・ハーツ)]で久々に彼女のアルバムを聴くこととなりました。アルバム・ジャケットの雰囲気からして、往年の女性ロックンローラーが持つ美しさと妖しさを漂わせています。

曲自体もハード・ロック色の強い1曲目の [WTF Do I Know] から7曲目の [Midnight Sky] までは、デュア・リパとのコラボしたダンス・チューンの4曲目 [Prisoner] なんかもありますが、マイリーのヴォーカルがどんな曲でもロックっぽくしてしまい、ハードな路線をひた走っていきます。ここまで行くと完全に確信犯的と感じる位の潔さです。今回は80年代のロック色を前面に出したアルバムなのでしょう。

とはいっても、80年代のハード・ロックのようにギターをあまり前面には出さず、ギター・ソロなんぞは気にならない程に鳴っていて、代わりに打ち込みも交えた強めのドラムとベースサウンドを中心にピート感を強調し、シンセで印象的なリフを刻んでいく曲が多いです。
それにこのロックっぽさに命を吹き込んでいるのが、どんなインストルメンツよりもマイリーのハスキーなヴォーカルというのが大きな特徴になっています。
もうドスが聴いてるといっても良い程のかすれたきったハスキー・ヴォーカルで本人もこの声を活かした作品でヴォーカリストとしての個性を確立したいと思ったんだと思います。
このアルバムのメインのプロデューサーであり、現在主流のポップやヒップホップだけでなくハード・ロックにも強いアンドリュー・ワットの影響も多分に感じられます。

特にシングル・カットされた7曲目の [Midnight Sky] は打ち込みビート強調しつつも、このアルバムを特徴づけるロック色が強く、且つダンサブルなハイライト・チューンになっています。シングルとしてこれが一番このアルバムでヒットしました。

共演アーティストもそんなアルバムの方向性を特徴付けるように、ビリー・アイドル、ジョーン・ジェット、スティーヴィー・ニックスと、今のセレブな女性シンガーが共演することはまずないといった往年のロック・スターとのコラボが驚きです。
特にビリー・アイドルとコラボした6曲目の [Night Crawler]は、当時サイバー・パンクとかデジタル・ロック等と呼ばれたビリー・アイドルの世界を甦らせるのに成功しています。PVがダークでおどろおどろしさをも感じさせ、オープニングでちょっとマイケル・ジャクソンのスリラーをパロった感じのゾンビ仕様? になっています。ビリー・アイドルも全盛期を思い出させるブロンドの髪が光輝く出立ちでPV出演しており、90年代初めの頃のビリーとマイリーが時代を超えて共演しているような錯覚さえ感じさせます。
ジョーン・ジェットとのコラボの11曲目の [Bad Karma] は、ダンス・サウンドとグラム・ロックをミックスさせてグリッターなノリのなかなか良い曲ですが、ジョーン・ジェットの声がマイリーにに過ぎていてどっちが歌っているのか分かりずらいのが逆に面白かったです。ただジョーンのあの特徴的なギターがあまり前面に出てなかったのが残念です。

時折挟まれるロック・バラードと言える曲もなかなか良く、3曲目の [Angels like You] はアコースティック・ギターから始まりコーラスでのマイリーの熱唱が印象的なシングルとなっていて、ラスト12曲目の [Golden G String] なんかは今度は70年代の懐かしさを感じさせるメロディが琴線を刺激する本編ラストに相応しいバラード曲になっています。

と、目新しいサウンドではないのですが、これだけ数多いる女性シンガーの中で、今よくいるウィスパー系とかR&Bの系譜の綺麗な声で高音までしっかり出せる情感豊かな路線でもない、ハスキーヴォイスのヴォーカルが新鮮で、マイリー自体も自分の声をしっかり活かせるサウンドで作ったこのアルバムはヴォーカリスト マイリーの存在感と表現力をしっかり際立たせるものとなっています。
作品トータルのロック感と曲それぞれの良さとともにしっかりと個性的で魅力的なシンガーに成長しているのが嬉しい限りです。

佳曲揃いで捨て曲がないアルバムではありますが、欲を言えば、あと一曲、全米トップ3級の魅力的なヒット曲があると良かったかなと思います。ただこれが今ブレイクしている [Flowers (フラワーズ)] の成功にしっかり繋がったという事になったのだと思います。

またマイリーのヴォーカリストとしての成長としては、昨年2022年にリリースされたライブアルバム [Attention: Miley Live] で感じることができます。[Plastic Hearts ((プラスティック・ハーツ)]での成果がこのライヴアルバムでしっかりと感じられ、前述した[パーティー・イン・ザ・U.S.A.(Party In The U.S.A.)] と [ザ・クライム (The Climb)]もしっかりライヴの一番良い位置で歌われていて、大人のヴォーカリストとなって表現力が増し、アイドル時代とは別の曲となったと言ってもよく、改めて感動できます。
必ずしもベストオフベストの選曲ではないかもしれないですが、選曲は新旧満遍なくツボを押さえていて、ベスト・アルバムをまだリリースしていない今のマイリーのを聴くには良いライヴ版になっています。

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