- 2020年3月27日
- 個人評価:★★★★★
ディスコ・ミュージックの懐かしさ、そしてダンス・ポップの未来へ
記念すべき?10件目の投稿は2020年から2021年ポップ界の最大のブレイク・アーティストでありアルバム、デュア・リパ(Dua Lipa) の [Future Nostalgia] です。
デュアはコソボ共和国出身のアルバニア人の両親の元、ロンドンで生まれたイギリス人の女性シンガー・ソング・ライターです。
エキゾチックでミステリアスな顔立ちは両親の出身に影響があるようで、ミュージシャンである父親の影響を受けてシンガーを目指すようになったようです。
デュアの曲を初めて聴いたのは、2017年リリースのセルフタイトルのファーストアルバムからのシングル [New Rules] が最初で、エキゾチックな美人シンガーのクールなエレクトロチューンだなぁという位しか印象がなかったですが、全英チャート・ナンバー・ワンのみならず、ヨーロッパ中で大ヒットし、全米チャートにもトップ・テン入りするスマッシュ・ヒットとなり、ブレイクのきっかけとなりました。
2017年にはサマーソニックで初の来日公演をし、2018年には単独来日公演をしているようです。
本人がスタジオジブリ作品のファンであるようで日本贔屓なようですね。
そして2019年11月からリード・シングル [Don’t Start Now]や [Physical]等のリリースを経て、満を持して2020年3月にリリースされたのが彼女にとってセカンド・アルバムとなるこの [Future Nostalgia] です。
2020年秋にリリースとなったこのアルバムからのシングル [Levitating] は、Billboard Top 100 の2位にランクインし、そのまま1位にはなりませんでしたが、2021年の年間ナンバー・ワンにもなりました。
ファースト・アルバムも万人受けするわかりやすいポップさとノリの良さが売りのアルバムでしたが、このアルバムでは80年代のディスコチックな懐かしい雰囲気と、前作から比べて何歩も突き抜けるような大衆性と曲の良さと濃さが強化されてます。
「未来の郷愁」と、そのままサウンド・イメージ通りのタイトルとなっています。
ダンス・ディスコ・ミュージックの理屈抜きの楽しさを追求し、そのサウンドとデュアのクールだけと冷めきってない人間味のあるヴォーカルが見事にマッチしており、モンスター級アルバムとなりました。
とにかくどの曲もフックが強力で、デュアのボーカルもかっこよさがレベルアップし、一皮も二皮向けたシンガーに化けており、曲によってはベースのうねりが前面に強調されているのが気持ち良いです。ワールド・ワイドな大ヒットになるべくして生まれたアルバムとなっています。
2020,2021年の大ヒットアルバムなので一曲一曲の解説はもう不要かと思いますが、歌詞も恋愛や失恋ソングをポップに展開する曲が多いです。
そんな暗さの感じられない、暗さをポップに吹き飛ばすような歌詞の曲の中で明らかに異質な曲がアルバムの最後に収録されている11曲目の [Boys Will Be Boys] です。
[Boys will be boys]とは男の子はいつまで経っても悪さをしたり、注意してもしょうがないという慣用句的要素と、男はいつまでも少年のような気持ちを持ち続けるという、男にとっては都合の良い慣用句であったり、言い訳にもなる言葉です。
この曲はメッセージ・ソングになっていて、上記の反面、女性は子供の頃から父親や母親や周りの大人や、テレビ番組でも女性はこうあるべきだとか、こう行動しろと教育されることへの抗議のような歌になっています。
見た目やしぐざ等で色々言われるけど、女性は周囲の価値観を押し付けられる存在であり、そんな理不尽な世の中は変わらない。
コーラスで、[Boys will be boys]と何度か繰り返されて、[But girl will be women] と締めるところが、男の子は男の子のままであることを許されるけど、女の子は大人の女性になることを強いられてしまう、そうであるからこそ、女性は自立して立ち上がらなくてはいけないと言っているように思えます。何かデュア自体の子供時代の経験を元にしたようなノスタルジックな表現も交えて、ダンス・キラー・チューンが揃ったアルバムのラストにすっと入っている隠れた名曲となってます。
このようなところもLGBTQの人達に支持される理由かと思います。
通常盤は上記の[Boys will be boys]がラスト曲ですが、[The Moonlight Edition] ではさらに本編の余韻をうまく引き継いでいくようなコラボ曲が続いていきます。やっぱり極めつけはダ・ベイビーとの共演の [Levitating] が秀逸です。
このPVでのデュアは今のトップ中のトップ・シンガーとして輝きまくってます。
このアルバムがリリースされて2,3ヶ月後には世界でコロナが流行し、パンデミックという暗い時期に入っていきます。
そして、このある意味クールであるけど明るいこのアルバムの歌が皆の希望となり大ヒットにつながっていくことになったのはこの時期の象徴として語られていくのでしょう。
次はどんなアルバムを作ってくれるのだろうという期待もありますが、こんな完璧といえるアルバムを作ってしまってこの先、どこへ向かっていくのだろうと思ってしまいますが、不安より期待を持って今後の活動を楽しみにしていきたいと思います。
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