まだいけます – 阿部真央 (Mao Abe)

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  • リリース日:2020年1月22日
  • 個人評価:★★★★

天賦のヴォーカリストの原点回帰のポップ・ロック

サイト立ち上げから洋楽が続いたのでこの辺りで邦楽ロックを紹介します。
前回紹介のフィオナ・アップルさんは様々な音楽を自分なりにクロスオーバーするアヴァンギャルドと言っても良いシンガー・ソング・ライターですが、今回は正統派ポップ・ロック・アーティストですが一癖あるのが魅力的な阿部真央さんです。

彼女がデビューして間もない時にリリースしたシングル[I wanna see you]と[伝えたいこと]に幸福にも出会えまして、その真っ直ぐなメッセージを乗せたストレートで元気が出るポップ・ロックが、グサッとオヤジ(と言ってもまだ30代でしたが…どっちにしろオヤジです)の心を捉えて離さず、その2曲を聴いて、タワレコに直行してセカンド・アルバム[ポっぷ]のCDを購入しにいきました。

[ポっぷ]リリース時、彼女は二十歳だったようで、ストレートな部分と偏った感情を持つ部分を歌詞にするのが特徴的で、ヴォーカリストとしても魅力的で久々に現れた天賦の女性ロック・シンガー・ソング・ライターの誕生に心躍ったのものです。
そして、聴きやすさを重視した作品を含めて作風を少しずつ変えながらリリースしつつも、一貫して天才ポップ・ロック・シンガー・ソング・ライターとして活動を続けています。

デビュー・アルバムの [ふりぃ]から1,2年に1作というコンスタントにアルバムをリリースしていき、今回紹介する [まだいけます] は、デビューから早12年以上(このアルバムリリース時は丁度10イヤーズ・アニヴァーサリーでした)、9作目のオリジナル・アルバムになります。前作 [YOU] からは約1年2ヶ月弱ぶりということになります。

1曲目の[darkside] からアコギをジャカジャカ鳴らす圧倒的なロック魂(これも死語だがこの人の歌唱にはしっくりくる言葉です)が炸裂したロック・ナンバーで始まり、4曲目のドラマ[これは経費で落ちません!]のタイアップ曲[どうしますか、あなたなら]はお仕事系ドラマの明るい雰囲気アップに貢献したご愛嬌のポップさ、続く[Pharmacy]は彼女自身お気に入りの曲のようで、ストレートで赤裸々な強い歌詞を作る人というイメージがありますが、[旅にでなよ魂 君の腕の中は”pharmacy”]といった韻を踏んだ言葉遊びをするところも彼女の作詞家としての魅力です。

6曲目の[どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜]は跳ねるようなリズムとちょっとクールな肌感の曲と、7曲目の[今夜は眠るまで]はライブだと一旦席に座って、と言った箸休め的な流れですが[今夜は眠るまで]は圧巻のバラードです。あまりJ-POPアーティストのバラード曲は最近ピンとこないのですが、これは切ない切迫感がある感情豊かなヴォーカルが素晴らしいです。
後半に位置する10曲目の[君の唄]は阿部真央の真骨頂のような元気を貰える歌ですし、ラスト11曲目の[おもしろい彼氏]は彼女得意のアコギ弾き語りの陽気にほんわかと締める流れも相変わらずなところがあり、今回はほぼ捨て曲がないのが良いですね。

この人は、軽くドスを聴かせたりするしっかり出る低音と鼻にかかる声で勢いのある男性的っぽいところもある奔放な歌い方と、比較的広い声域でクリーンに綺麗に歌うことも出来るヴォーカルから生まれる表現力がデビュー時からどんどん魅了を増しています。

彼女の持って生まれた執拗にと言っても良い他者を求める感情や、ストレートな感情を強烈な言葉に乗せる曲を作るソング・ライターとしての才能を合わせて圧倒的なロック・シンガーとしての存在感を感じさせるのでしょう。
彼女のヴォーカルを聴くと、ロッカーという言葉がピッタリ来て、今では死語になりつつある(なってしまった)言葉が古さや時代を超越して、リアルに”今”存在する象徴として感じることが出来ます。
特に今作はデビュー当時の彼女が経験を重ねた上での原点回帰という感触があり、元気で奔放なポップ・ロック色が強い曲が多くなってます。

私はあまり邦楽チャートは見ないのですが、オリコンチャート実績を見ると出せば常にトップ・テン・ヒットを続けているという感じではないですが、セールスとしては中堅どころとして定着しているようです。
もっと評価されても良い人なのですが、goo の[正真正銘の天才だと思う女性シンガーソングライターランキング] で1位から20位の誰でも知っている女性シンガーに並んで20位に付けていることを考えると世間の評価も捨てたものではないのではと思います。
(ちなみに1位は宇多田ヒカル、2位はユーミン、3位は中島みゆき、同票の20位は大塚愛でした。)

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