ひとそれぞれの「王様になれ」
今回は2019年に上映されたザ・ピロウズ (the pillows)結成30周年記念企画の一環として制作された映画 [王様になれ] を紹介します。
- 2019年製作/115分/日本
- 映画公開日:2019年9月13日
- 配給:太秦
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本当に今更ながらですが、私の好きなバンドの一つである the pillows の映画 [王様になれ]をDVD鑑賞しました。
正直the pillows好きならば遅すぎる程の今更で、上映中に気づいていれば当然映画館まで足を伸ばしたのですが、当時the pillowsアンテナ張ってなかったので気づかずに行けず。その後、ずるずると公開から4年程経過してやっとの鑑賞です。
その分、サントラを何度も聴いていたので、映画の中で、「あっこのメロディ!? あのインストの!?」という楽しみが何回もあったのがまぁ良かった点ですかね。
前情報は断片的にインプットしている上での鑑賞なのですが、カメラマン志望のが20代後半の主人公がなかなか思い通りにいかず焦りだす時期に、知り合った女性を始め周囲の人達に影響を受けながら成長していくといった人間ドラマです。
序盤にthe pillows のライブに行った主人公が自身のバイト先のラーメン屋の常連のpillowsファンの女性とたまたま行ったthe pillowsのライヴで偶然に出会うことでストーリーが展開されていき、それからはpillowsの曲がドラマを彩ってくれます。
代表曲もライヴ・シーンの中を含めてバンバン流れていくのでpillowsファンな序盤のこの辺りから軽くテンションあがります。
主人公の背中をそっと押してくれるその女性と悪い雰囲気になっていったり、勤めているスタジオを首になったり、といったどん底に沈みそうな時期の人間模様に、pillowの曲が絡んでくるといった、the pillowsを知らないと地味な人間ドラマと感じてしまう映画です。
ストーリーはがある意味シンプルで、突っ込みどころはあったりするのですが、エンディングではカメラマンとしてのちょっとした成功を掴むまでの過程に考えさせられる映画となっています。
一回観た後の感想としては、あの時の主人公の感情ってどのな感じだったのだろう、なぜ、カメラマンとして一区切りとなる成功ができたのだろう、付き合っていた女性とは関係はどのようなものだったのだろう、サワオさんって本当にネギ嫌いなのか(これはどうでも良い・・・)とか結構考えさせられるとこともあったりします。
そんなもやっとしたところも残ったり、終わった後に気持ちをひきずる映画です。
the pillows自体の歌詞自体が、ちょっとしたワンフレーズが心に引っかかったりしますが、聴く人に明確なメッセージを押し付けないものであり、音楽も歌詞も感覚的に受け入れるものになっているので、自分もこの映画をそのようにあるがままにあーだこーだ言わずに受け入れようと思います。
でもこの映画の中でグッと来たのはラスト近くのライブ中に主人公が見る彼女からの一言のワンフレーズ・レターの言葉ではないでしょうか。(ここはさすがに書けない位のトリハダシーンです。)
個人的にはここのシーンが、「the pillowsやっぱかっこええ!」と感情の爆発させてくれる彼らの音楽に近い感覚が蘇りました。
個人的にはこの映画のメッセージがあるとしたらあの一言だと思います。
その他にも the pillows ファンならピンとくるセリフがあったりしますので、この映画のthe pillows からのメッセージをどう解釈するかは見た人、ファン次第だと思います。
あくまで、the pillows がthe pillows のファンのために作るという事が第一にあるとは思うのですが、感想としては、観た後に軽く元気づけてくれる映画になっていると思います。
the pillowsファンとして、やっぱこの映画観ておいてよかった、一回観たけどまた見てみたいな、と思える映画になっているのではないかと思います。
the pillowsのサワオさんはこの映画を「ピロウズとはどんなバンドだったのかを後世に伝える手段として映画制作を考えた。ストーリーを通してピロウズが如何に多くの人に愛されてきたのかを伝えていきたい」と語っています。
ファンも色々だと思います。
90年代からずっと追っているファン、この映画の主人位の新しい若いファン、ライヴに何十回も足を運んでるファン、既にthe pillowsから離れてしまったファン、私のように90年代後半にふとしたきっかけで[Fool on the planet]で出会い大好きになっても一度離れてしまい最近再会したファン。
まさにサワオさんが言っている「ストーリーを通してピロウズが如何に多くの人に愛されてきたのかを伝えていきたい」という言葉が、それぞれにファンの人達に違った人生があり、それぞれが違った感じ方ができる映画になっています。
決してヒットチャートの常連ではなくとも30年という歴史の中で、映画の中でのセリフでもありましたが、それって並大抵のことではないと思います。
その結果、ファンに愛され、他のミュージシャン、バンド連中にもリスペクトを得てきた the pillows であれば、音楽映画で良く見るドキュメンタリーや伝記物でも作れたと思います。
しかしながら、あえてオリジナル・ストーリー物というひねくれ具合が the pillows らしいです。
しっかり、ファンがバンドと歩んできた人生をよぎらせてくれる良い映画です。
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