Collapsed In Sunbeams – アーロ・パークス (Arlo Parks)

ARLO PARKS-COLLAPSED IN SUNBEAMS
  • リリース日:2021年1月29日
  • 個人評価:★★★★

アオハルの光と影の瑞々しさ

今回は2021年にリリースされたアーロ・パークス (Arlo Parks)のデビュー・アルバム [コラプスド・イン・サンビームス] (Collapsed In Sunbeams)を紹介します。


アーティスト・アルバム紹介

このアルバムリリース時は2000年生まれの21歳で、ナイジェリアとチャドのアフリカとフランスの血を引き、イギリスはサウス・ロンドン出身の女性シンガーソングライターシンガーです。(彼女自身は17歳の時にバイセクシュアルであることを自認しているとのことです。)
母親の影響で幼い頃からジャズ等の音楽や文学にも親しみ、文学的素養や感性を養い、実際に自身で短編小説や詩を書いており、ローティーンの頃にクラシックピアノを学んでいましたが、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)に感化されて作曲活動を初めていきコンテンポラリー・ミュージックの世界に入って来ました。

2018年にリリースされたデビュー・シングルの、[Cola]という曲が、翌2019年リリースのデビューEP[Super Sad Generation]
に収録されており、2021年1月にこのデビューアルバムのリリースとなります。
[Cola]はこのデビュー・アルバムのApple Musicのデラックス版は [lo fi louge] という宅録感のあるバージョンで納められてます。

アルバム収録曲の全12曲中の大半をアーロとプロデューサーのジャンルカ・ブッチェラーティが書き、5曲程、外部のソングライターとの共作となっています。
アーロのライターとしてのクレジットはは彼女の本名のアナイス・オルワトウィン・エステル・マリニョ(Anais Oluwatoyin Estelle Marinho)でクレジットされています。

アルバム・インプレッション

実は一聴した時にはこれはさらりと耳を流れていき、聞き流すような完成度の高いオシャレ系BGMとして聴くものだなと思い、アーティスト、アルバムの魅力はあまり感じませんでした。
ただ2021年を通して何度か聴いているうちに、ある時点で、新人アーティストに感じる成熟されていない若さとか初々しさとか、ロック系だと粗削りな魅力という次元ではなく、この若いアーティストというかこの人にしか表現できない瑞々しくも繊細な感性は只者では無いと感じてきました。
先に書いたようにぽっぷ・ミュージックとして完成度は既に高いのですが、それに勝るこれからののびしろとしての若さや危うさ、脆さや繊細さを強く感じるので決して完成されきったというか成長された感じがなく、あくまでまだまだこれからのアーティストという印象が強いです。
アーティスト アーロ・パークスというまだまだ発展途上な無垢なアーティストの今の姿をそのままパッケージして届けられた作品になっています。

鳴物入りでプロデューサーや豪華のコラボミュージシャンにバックアップされた派手さは一切無く、新人アーティストのデビュー作でしか聴けないような思春期の青さや優しさだけでなく、痛みや屈折感も含めて封じ込めた作品に久々に出会えた気がします。

柔らかく透き通るような透明感と優しさを持つボーカルと、ゆったりとしたグルーヴ感と心地よいメロディにすっかりハマり、聴き込むうちに体に染み込んでくる感じてきて、今ではアーロのユニークな短髪とパイセクシャルなルックスも含めたユニセックスさも愛おしさをも感じる位です。
ベースはソウル・ミュージックなのですが、インディやネオアコ等のイギリス出身らしいフィルターを通しておりロック・ポップスファンにも聴きやすく馴染みやすい作品になっています。
エレクトロっぽいところが薄く、アコースティックが感触がクールなのですが温かさを感じます。

1曲目の [Collapsed In Sunbeams] は抽象的な詩の朗読のトラックなのですが、このアルバムのイメージトラックのように、若さゆえに理不尽だったり不安に感じたりすることに自分らしく素で向き合おうというオーガニックな姿勢が感じられます。
2曲目の[Hurt]という曲ではアルコール依存に苦しんでいる歌の中の主人公や、6曲目の[Bkack Dog] も心の病に苦しむ友人に対して、優しく寄り添うような気持ちをうまく叙情的さも感じる歌詞とサウンドで現しています。
他者への心遣いだけでなく、ほろ苦い恋愛を綴った10曲目の[Eugene]等の自身の経験と思われる独白のような歌もあったりします。

天使のようなという表現とはまた違う、あくまでも人間らしさを感じる、遠くで見ていてくれている優しい友人のようなソプラノ・ヴォイスで歌われる名曲の数々と、天賦の才が今後どのように更なる成長をしていくのか見守っていきたくなる新人アーティストです。

参考サイト

日本ではまだまだ目ざとい音楽ファンに限られた注目度で多くの情報はないようですが、ファッション系のfashionsnapのサイトにアーロの生い立ちやこのアルバムの紹介が詳しく書かれてました。

そして2021年1月、「この作品は、私の思春期とそれを形作った人々を取り巻く一連のヴィネットで、個人的なポートレイト。ストーリーテリングとノスタルジアに根ざしていて、普遍的なものと特異なもの、その両方を感じてほしい」という思いが込められたデビューアルバム「Collapsed in Sunbeams」がリリースを迎えた。

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