Evermore – テイラー・スウィフト (Taylor Swift)

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  • リリース日:2020年12月11日
  • 個人評価:★★★☆

2020年 フォークロアの森の旅

今回は2020年にリリースされたテイラー・スウィフト (Taylor Swift)の9枚目のオリジナル・アルバムの エヴァーモアを紹介します。


アルバム紹介

コロナ(COVID-19)のパンデミックの影響により、2020年内に計画していた全てのコンサートを中止されたことにより、計画になかった前作の [Folklore (フォークロア)] が2020年7月24日(日本は8月7日)にリリースされ、それからわずか5か月足らずでリリースされました。[Folklore] と同様、リリースの数時間前にソーシャルメディアで発表されたサプライズアルバムです。

プロデューサーは前作同様に、テイラーの盟友であるジャック・アントノフと、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーの3人が中心となっています。
テイラー – ジャック、テイラー – アーロンの組み合わせのソング・ライター、プロデュースのペアが多く、前作同様に3人以外にテイラーの(既に破局したようですが)恋人であるジョー・アルウィンも数曲制作に参加しています。

これだけ前作からリリース期間が短いと、前作から並行して制作されたアルバムだったりアウトテイクであることも想定されますが、実際は、[Folklore]の制作後、曲を書くのがやめられず、フォークロアの森の境に立った時に音楽の森をより深く探求することを選択をした結果、このアルバムの制作、リリースとなったようです。

前作が有意義な結果となったことにより、更なる自身の今追求したい音楽の深みにさらに踏み込んだことにより制作された続編・姉妹作といえるアルバムでしょう。
テイラー曰く、[Folklore]は春夏、[Evermore]は秋冬をイメージしたとのことです。

アルバム・インプレッション

[Folklore] = 「伝承」、[Evermore] = 「永々、ずっと」と、過去よりも、「今より先の未来」を想像させるタイトルです。
アルバム・ジャケットからも、[Folklore] が時折日が差し、時には霧雨が降るような心に傷や不安感を伴いながら森の中を彷徨っているテイラーを感じますが、[Evermore] はフォークロアの森から抜け出し、過去の自分の世界と、伝承・神話の世界から戻ってきたテイラーの後ろ姿といった感じであり、アルバム全体も明るいカラーも纏った様子を感じます。
冷たい春夏をイメージする [Folklore] 、暖かさを感じる秋冬がイメージされる [Evermore] といった感じです。

[Evermore] も初めはサラッとしすぎて印象が薄く記憶に残らない曲が多くましたが、私にとっては今作は[Folklore]以上にその印象がありました。

[Folklore]の曲が彼女の十代の頃の恋愛を振り返るようなノスタルジーと、伝承や神話のようなストーリーテリングに合わせて、実はじっくり聞くとかなりエモーショナルなメロディで、あくまでアコースティックな[Folklore]という世界観の中でヴァラエティに富んでおり、今作は今のテイラーの作ったパーソナルでありながら、不思議と暗さや痛みをともなう感じは薄く、日常でふと感じた感情を歌詞にして、前作よりも抑揚を抑えたメロディに軽やかで明るく控えめなピアノをベースとしたサウンドをリンクさせるといった曲が多いように感じました。
ポエトリー・リーディングではないですが、より、一遍の詩のような曲集になっているように感じました。

サウンドも両アルバムとも、シンプルなアコースティックベースのサウンドですが、[Folklore]ではヒリヒリした感触が伝わる曲もありましたが、[Evermore]では、穏やかな感触が伝わってくる曲が多いです。秋冬イメージとのことですが、暖かめの部屋でソファやロッキング・チェアに座りゆったりと聴くのが合うアルバムです。

この姉妹作は好き嫌いは分かれると思いますが、私はヴァラエティに富んだ [Folklore] の方が好きですが、[Evermore]も穏やかな曲の中にもハッとする曲が結構あったりします。どちらのアルバムも聴きこむ程に浸っていける曲達が揃っています。

まず、6曲目の [no body, no crime] は、テイラーの友人であるこのサイトでセカンド・アルバムを紹介した3姉妹バンド HAIM のエステ(長女でベース担当)の名前が出てきます。
夫婦の不倫を殺人犯罪仕立てのストーリーにして、歌詞の中の妻の友人である私(テイラー?)も殺人犯罪に加わり、最後は旦那の愛人も犯罪の中に巻き込まれ、生命保険も絡むエグい内容を、テイラーが淡々と歌うという歌詞が面白い曲になってます。

8曲目の [dorothea]は、このアルバムの中で印象的なメロディを持つ曲になっていて、ドロシアはテイラーの親友である、またまたこのサイトでもアルバム紹介したセレーナ・ゴメスにインスパイアされた曲という説があります。
華やかな世界で気丈に頑張る友人へ、今は離れていても優しいエールを送るような曲となっています。大切な友人に捧げる曲ということでは、セカンド・アルバム [Fearless] の[Fifiteen] を思い出したりしました。

12曲目の [long story short] あたりはリズム・マシーンのビートを取り込み、このアルバムで一番アップテンポになっていて、今までのテイラーのアルバムに入っていておかしくない曲ですが、 [Evermore] の中でも浮かないように穏やかなサウンドに仕立てられてます。

15曲目には [Folklore] の名曲 [exile] で共演していたボン・イヴェールとの再演となっています。
静かなピアノから始まり、曲の雰囲気は違えど[exile] でも感じた後半には、テイラーとイヴェールの声が交互に絡むクライマックスに軽い高揚感を感じられます。
歌詞はあくまでイマジネーティヴなものですが、11月、12月の冬の歌で寒さの中で物思いに耽り、イヴェールの歌がテイラーの歌を追い詰めているのか慰めるいるかのように絡んできます。この曲は秋冬の寒空の空気を感じさせる曲になっています。
アルバム本編のクロージングに相応しく、この曲の中で、「I had a feeling so peculiar That this pain would be for Evermore (この傷が永遠に消えないだろうというとても不思議な気持ちだった。)というアルバム・タイトル [Evermore] というフレーズが印象的です。

アルバム単作としても楽しめますが、どちらも何度か聴きこんだので、時間がある時に[Folklore]と続けて聴いたり、さらに対比させて聴いてみたいです。
改めて感じたのが、どちらも一聴すると耳に残らなかったですが、何度か時には歌詞を見ながら聴いていくと愛着を持てる曲がたくさんできてくるのがこの2作の魅力です。

ヴォーカリスト、ソングライター、そして自信をコントロールするプロデューサーとして成長し、初期からのファンは、テイラーをカントリー界の元気で美しいお姫様という幻想をどうしてもぬぐえませんでしたが、このフォークロアの森の世界の冒険、旅を経たこの2作のアルバムを聴き、今後は素直に一人のアーティストとしてテイラーを見ていけるようになりました。

そして私にとっても2020年に好きになったアルバムを2023年に振り返ったレビュー・感想の旅もこのアルバムを持って終わりにします。また感銘を受けた2020年リリースのアルバムが出てきたら再投稿します。

参考サイト

当投稿を書くにあたり、参考にしたサイトです。

[Folklore]に比べると[Evermore] は比較的音楽サイトでの特集記事は少なく感じましたが、rockin’on と U discovermusic.jp が[Folklore] との比較や [Evermore] との繋がりや、曲紹介、テイラーのコメントを含めて解説されていて秀逸でした。

テイラー・スウィフトが、「不確かな世の中だからこそ、みんなと音楽で繋がり続けたい、永遠に(=『evermore』) 」と突然発表した今年2枚目の新作についての思いを語る

rockin’on 中村明美の「ニューヨーク通信」 | rockinon

テイラーは、新作『evermore』について『folklore』との「姉妹アルバム」と説明している。初めての連作は、共に彼女の経験ではなく、実在の人物が登場することもあるが、多くの歌詞が架空の物語であることがこれまでとの大きな違いだ。そこに登場する“あなた”も、物語も、聴き手がどう捉えるかで、見えてくる風景が変わってくる。曲と曲の関連性を指摘する声もある。リアルな共感を超えたところのイマジネイティヴなおもしろさが新たな魅力となった。

COLUMNS テイラー・スウィフト『evermore』解説:パンデミックの日常から生まれたアコースティックの追求 | U discovermusic.jp

和訳サイトとしては、おこめさんのブログが曲解説や英訳の深掘りとともに、テイラーへの愛が感じられのが素晴らしいですね。それぞれの曲を聴くのにとても役立ちました。
和訳サイト おこめのブログ #EVERMORE

アメブロの「今日もロックな日々」ではアルバム・スリーヴも掲載されていてCDブックレット内のフォトも掲載されています。

「テイラー・スウィフト(Taylor Swift)」の20年12月発表、9th「エヴァーモア(evermore)」を聴きました。
僕が持っているのは、21年1月発売の日本独自企画・数量限定盤デラックス・エディション、ボートラ4曲付。

テイラー・スウィフト / エヴァーモア(デラックス・エディション) | アメブロの「今日もロックな日々」

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