After Hours (Deluxe) – ザ・ウィークエンド (The Weeknd)

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  • リリース日:2020年3月20日
  • 個人評価:★★★★☆

異形のポップ・スターの一つの到達点

この投稿時現在、男性シンガー・ソング・ライター、ポップ・スターとしては No.1の存在と言って良い The Weeknd (ザ・ウィークエンド)です。
スタイルは違えど、イギリスはエド・シーランであれば、アメリカ(実際はカナダ出身)はこのザ・ウィークエンドと言って良いでしょう。
特にこの人はトップチャートにコラボも含めて何らかの曲が2023年現在でも Top20 にチャートインしてない週はないと言って良いヒット・メイカーです。

男性ポップ・スターといえば、ジャスティン・ビーバーとかハリー・スタイルズとかもトップ中のトップですが、彼らはいわゆるアイドル的人気者であり、私ら中年男性にとってはハードルが高い存在です。ただウィークエンドは癖が強く、毒気が強いのでついつい興味がわきます。

彼の少年時代は共稼ぎで家に両親がいないことが多く、祖母に引き取られ、荒れ放題の生活をしていて、薬物を乱用したり、高校も中退し、複数の女性の家を転々とするジゴロのような青年期を過ごしてきたようです。
音楽との出会いは意外と遅く、1990年の彼が20歳の時期にミュージシャン仲間との出会いがきっかけで音楽制作をするようになり、それから才能を開花させ、とんとん拍子のスター街道をひた走るようになります。

2014年には、アリアナ・グランデのアルバム [マイ・エヴリシング] に収録された [Love Me Harder] で共演し、映画 [フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ] のサウンドトラック内のシングル[Earned It] をリリースし、両シングルは Billboard Hot 100でトップ10入りとなります。

2015年に2枚目のアルバムとなる [Beauty Behind the Madness (ビューティ・ビハインド・ザ・マッドネス)]、2016年に3枚目となるアルバム [Starboy (スターボーイ)]も Billboard Top 200 のナンバー・ワンとなり、一躍トップ・アーティストとなります。

そして、4枚目のアルバムがこの、[After Hours (アフター・アワーズ)] です。

相変わらずウィークエンドらしく、ダメ男スーパースターの悲哀や狂気を歌詞・サウンドで表現し、物悲しさを纏った曲が中心ですが、時には軽やかなポップでフックが印象的な曲を挟んでくるというスタイルは今までのアルバムの流れを踏襲しています。
ただ作品・アルバムを重ねる度に彼の世界観がどんどん磨かれていっており、このアルバムが一つの到達点と言えるでしょう。

フックが印象的な曲という事では、今回はチャート・アクションが示す通り、特にシングル曲が秀逸で、7,9,11曲目の3曲は別格です。

7曲目の [Heartless] はこのアルバムのリード・シングルであり、俺は感情がない者という虚無感がいかにもウィークエンドらしく、そこはかと残る人間的感情での後悔の念を交えて感情を赤裸々に歌っているゾクッとくるナンバーです。

そして9曲目の [Bliding Lights] は2020年Billboard Hot 100 の年間ナンバー・ワン・ナンバーです。
A-ha の [Take On Me] 風の80年代風シンセが印象的なこのアルバムのキラー・チューンです。

そして、11曲目の [Save Your Tears]。これは毎週のようにベストヒットUSAにチャートインしていたので短いコーラスのみ何回もリピートして聴かされいて、何ということのない曲だと思ってましたが、曲トータルで何度か聞くと完成度の高いポップ・チューンであることに気づきます。

血まみれで薄笑いを浮かべるアップの顔のジャケットからは明るさが微塵んも感じない雰囲気を感じさせますし、どのPVを見てもドラッグだけでなく狂気という部分でそうとう行ってしまってます。

どうしてここまでヒットするのだろうと思ったりしますが、アルバム全体を通してサイケではないけどクールでトリッピーな曲の数々と抜群のポップセンス、そして彼の歩んできたどん底のドラッグまみれの生活とセレブとなった今の生活とのゆがみから生まれる歌詞には異様な感情の吐露が織り込まれており、相当にリスナーに訴える力が強いのが要因だと思われます。そしてそれが常人にも十分に浸れる世界が展開されてます。

またドラッグ・カルチャーがアメリカ等欧米の国には強く残っていることも要因だと思われます。
そんなことを考えると日本ではまだまだ洋楽通の間での人気かと思いましたが、2018年に幕張メッセで来日公演をしていて、米津玄師がスペシャル・ゲストとして共演しているのですね。
ウィークエンド自身も公演では会場を煽り、熱狂的なコンサートだったようです。

ネットのインタビューによると現在の彼は飲酒やマリファナは吸っているがドラッグはもうやってないとのことです。
アメリカではマリファナが合法となっている州がそれなりにあるようですが、アルバムを聴かれる独特の悲哀や虚無感はもうドラッグには頼ってないようです。
少しずつでもクリーンになっている事がこのアルバムの完成度に影響されているのではとも感じました。

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