- リリース日: 2020年2月7日
- 個人評価:★★★☆
ベテラングランジバンドの大人のアコースティック
90年代にニルヴァーナを筆頭に、パール・ジャム、サウンドガーデン、スマッシング・パンプキンズらと共にグランジ・ロック勢として一代ムーブメントを巻き起こし、メンバーチェンジをしながらもロック界の第一線で活動をするストーン・テンプル・パイロッツです。
グランジ勢はもはや伝説となったニルヴァーナは別格として、上に挙げたバンドそれぞれが個性を持ち、このストーン・テンプル・パイロッツも亡くなってしまった初代ヴォーカリストのスコット・ウェイランドの持つ危なく妖しい雰囲気が全面に出ているラウドな初期の二作の大ヒットアルバムが有名です。
2002年の解散と2008年の再結成を挟みつつ、スコットの死を中心とした紆余曲折を経て、今作が8枚目のアルバムとなります。
事前情報無しに聴き始めたので、1曲目がアコースティック・ソングとなっていて、えっと感じました。
これがこのアルバムの中でのピカイチの名曲 [Fare Thee Well] です。
アメリカン・ロッカ・バラードなのですが、往年のハード・ロック勢やカントリー界の男性シンガーのバラードとは趣が異なり、メロディアスだけど80年代のハード・ロック勢のバラードのように売れ線狙いのあざとさは一切なく、とはいえまだ枯れきってもいません。
前作から加入したヴォーカルのジェフ・グートはちょい若いですが、今や50代半ばあたりである彼らの等身大の大人のロッカ・バラードになってます。
2曲目の[Three Wishes]は、穏やかなアコギから始まり、愁いのあるサビのヴォーカル・メロディが魅力で、3曲目のタイトル・トラック [Perdida] も変な湿っぽさを感じさせないアメリカ的な哀愁を感じるアルバム内で [Fare Thee Well] に並ぶと言える名曲です。
それ以降もアルバムにはアリーナを沸かせるようなロック・ソングは一切なく、アコースティック・ギターを中心に、クリーンなエレクトリック・ギターとキーボードを雰囲気程度に交えつつ、フルートやアルトサックス等の管楽器も効果的に響く、全曲アコースティック曲のみとなっており、ジェフのクリーンなヴォーカルと凛とし演奏を堪能できるアルバムとなっています。
企画版やコンセプト・アルバムではないと思いますが、ある意味大胆な方向性です。
このレベルのバンドとなると余裕というか力の抜き加減を理解してプロのアルバム作りをするようになるのですが、なんか聞いていてフレッシュさを感じるのがここ最近のこのバンドの不思議な魅力です。
評論家好みのオルタナ・フォーク/カントリーのように聞く前に少し身構えてしまうような変なこ難しさがないのが良いです。
45分という丁度良い長さですが、個人的にはアルバム後半に入ってくると佳曲は並んでいるのですが、抑揚にかけてきて退屈になってくるので、激ロックでなくともアコースティックながらも少しアップテンポな曲を2曲位挟んでくれるとトータル・バランスが良いアルバムになったのではと思いました。
ジェフが加入した2018年リリースの前作の2枚目のセルフ・タイトル・アルバムもスコット・ウェイランド時代とは趣が異なりましたが、ヴォーカル・スタイルにピッタリとハマるオーセンティックでストレートな大人の雰囲気と共に、不思議に新鮮さを感じる良作ロックアルバムとなっていて僕は大好きなアルバムでした。ここでこのアコースティック・アルバムです。
さらなる次がいつになるのかわかりませんが、本当の意味での等身大のメンバー達の大人のアメリカ流の粋を感じさせる完全な新生ストーン・テンプル・パイロッツ・サウンドで大ハマりさせてくれるのではないかという期待と共に次作も楽しみに待ってます。
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