Manic – ホールジー(Halsey)

manic-halsey
  • リリース日: 2020年1月17日
  • 個人評価:★★★★

異端派ポップアイコンの独白

デビュー・アルバムで全米2位、セカンドアルバ全米1位と、数多いる女性アーティストの中でも乗っている一人がこのホールジー(Halsey)です。
そして2020年初頭にリリースされたサード・アルバムがこの [Manic] です。

本国のアメリカのみならずヨーロッパでもイングランド中心に好調なセールスを記録していますが、2016年のデビュー・アルバムリリース後のアメリカでの人気が急上昇中の時期に来日公演があったようで、本人のRolling Stone誌のインタビューによると会場はガラガラで公演前までバックステージで「これどうしよう?」といったやり取りがクルーとあったようですが、結果、ライブは大成功。その経験が今後の活動の糧になっているようです。その来日からすでに数年経過してますが、今の日本の人気も気になるところです。

日本で成功する洋楽女性アーティストは曲の良さはもとより、明るいイメージだったり、個性的な可愛さを持ってたり、日本人好みのルックスだったりする人が支持されますが、このホールジーは微妙です。
[Manic] のアルバムジャケットも左目の周りに青いラメを施して笑いもせず正面を見つめる表情は誰かに殴られた跡かのようです。
実際はいくつかのフォトやPVで見られるように明らかに美人さんなのですが、アルバムジャケットからは自分を着飾ったりせずに今の時代のポップアイコンとは異なる様子を感じさせます。

アルバムはというとスローでシンプルなエレクトロな2曲から始まります。
自身の本名をタイトルにした1曲目の[Ashley]から、他者と分かり合えないながらもパートナーを求める寂しさをシンプルなサウンドと自身の切実な歌で表現する[Clementine] へと、孤独やディスコミュニケーションを静かながらも時折声を張り歌いかけます。

3曲目の[Graveyard] はDVを扱った曲なのか、歌詞は情念的では片づけられない愛情や優しさを感じられ、前2曲に比べると少しアップテンポになり、メロディーも素晴らしく、アルバム続きへの期待度が増していきます。

8曲目の[3am]は夜中3時という一日の中で世間が一番静かになる時間帯である真夜中のミステリアスな雰囲気に、孤独感とセクシャルなワードが混ざり合う歌詞と、このアルバムで一番ロック的要素の強いサウンドで、個人的にこのアルバムで一番好きな曲です。
9曲目は公認となっていた元カレとの破局ソングで赤裸々な感情が話題を呼んだ [Without Me] はこのアルバムの中の最大のヒットであり、この後もホールジーというアーティストの魅力を感じさせる曲が続いていきます。

BTSやエド・シーラン等の豪華アーティストとのコラボもありますが、中でも11曲目のアラニス・モリセットとの[Alanis’ Interlude]は新旧エキセントリック女性シンガーの共演が興味深いです。

そしてアルバムは最終16曲目の淡々としたアコースティックな[929]で幕を落とします。
1曲目の[Ashley]は自身の本名をタイトルにした曲ですが、[929]はホールジーが9月29日生まれである自己紹介のようなフレーズで始まり、これまでの人生と今の感情を独白するようなパーソナルな曲でアルバムはクローズします。

アルバム通して感じられるのが、ホールジーという女性の中の闇や内面を深く掘り下げていく歌詞の中にもどこか希望の光を見いだす葛藤が感じられ、ほとんどの曲にはっとするような切ないメロディを織り交ぜつつ、ゴシック的な暗さを醸し出すクールなエレクリックサウンドを基調としつつもロック・アコースティック・ヒップホップ等、ホールジーが両親の影響で子供の頃から聴いてきた様々なサウンドを自然に消化していく幅広い音楽性が感じられます。

自分の内面を掘り下げるがあまりに他者には分りにくい曲もありますが、要所要所には多くの聴く人に訴えかえるポップ性を持つ曲を挟みながら、アルバムトータルとしての完成度を高めている傑作となってます。

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