シネマティック (Cinematic) – アウル・シティ (Owl City)

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  • リリース日:2018年6月1日
  • 個人評価:★★★☆

ドリーミー・ポップ・エレクトロ職人の自伝的、個人的な作品です

今回は2018年にリリースされたアウル・シティ (Owl City)の6枚目のオリジナル・アルバムの シネマティックを紹介します。

アウル・シティ (Owl City)はアメリカ出身のアダム・ヤングによるソロ・プロジェクトです。

ファーストアルバム[Ocean Eyes]の[Fireflies]を聴いた時、私にとって一発でエレクト=機械的な味気のない音楽という偏見を取り去ってくれた大切なアーティストです。
同様に大ヒットしたカイリー・レイ・ジェプソンとのコラボ曲[Good Time]なんてカイリーのヴォーカル、コーラスも可愛く最高に元気にしてくれる曲でした。

80年代にもa-haやハワード・ジョーンズのようなアーティストがエレクトロ・ミュージックの暖かみを感じさせるサウンドを作ってましたが、ロックこそ一番だった私にとってアウル・シティがエレクトロも積極的に聴いてみようかなと思わせてくれたアーティストです。(正直、時の流れの中でロックが下火になって来て幅広げたいなと思ってたということもありますが…)

という訳で、この6枚目のアルバムシネマティックです。

デビューから順調なセールスを記録していましたが、このアルバムはヒット・シングルに恵まれなかったのかセールス的には苦戦したようです。

この業界も流行り廃りがあるので、突出した活動やアリーナ級アーティストにならない限り、時の流れの中で同タイプの新鋭アーティストに埋もれて行ってしまうのはやむを得ないですが、これだけの作品を作り続けるオリジナリティのあるアーティストなので根強いファンはいるはずと思ってます。

一言で言うと相変わらずのアウル・シティらしいアルバムに仕上がってます。

柔らかくも弱さは決してない優しいアダムのヴォーカル、メロディを重視したエレクトロサウンド、それに効果的に絡むアコースティックやエレキ・ギター・サウンド。
どこまでも夢見心地にして優しく包んでくれるサウンドは、アウル・シティ後に続くメロディック・エレクトロ・アーティストとは一味も二味も違うオリジナリティを感じます。

そしてこの6作目のシネマティックです。
ここ2作位は、他のプロデューサーとのコラボ作が続きましたが、久々にアダム一人がプロデュースと作詞・作曲となっています。

今まではアダム・ヤングの想像力から生まれたファンタジックと言っても良い曲が多かったですが、このアルバムではアダム本人が人生で経験した出来事や個人的な視点から生まれた自伝的アルバムとして作られたようで、各曲にテーマを持って作られたようです。
暖かさをを感じさせるサウンドは変わらずですが、より現実的で人間的な歌詞となっていますが、サウンドとの相性も相変わらず良いです。

そんなテーマを持っているので、いつものドリーミーなポップ・メロディ満載のアルバムとは違って一聴するとアルバムのトータル性や歌詞を重視しており、ちょっと地味かなと感じますが、そのコンセプトを理解しつつ歌詞も見ながら聴いてみるとまた違った角度からアウル・シティの良さを感じられるアルバムになっています。
特出したキラー・チューンはないかもしれませんが、アルバム・トータルとして自然な流れで身を委ねられる作りになっていると思います。

アルバムは1曲目の映画のイントロデュースのような[Fiji Water]から始まります。
高級なミネラル・ウォータの代名詞のです。デビュー前にアダムがスカウトされ高級ホテルでインタビューを受けにいく様子をちょっとコミカルさを交えた歌詞とこれからの人生が上向いていきそうな躍動感がよく現れているサウンドです。

2曲目の[The 5th of July]はアダムの誕生と彼の家族の物語ですね。
柔らかなエレクトロ・サウンドとヴォーカル、そしてシンプルながら家族に愛され生まれたことがわかります。

8曲目の[Always]は父への祈りがテーマとなっています。歌詞を聴くとアダムにとって優しい父親の死を悼んで歌われているようです。間奏のエレクトーンのメロディが感傷を誘います。ちょっと往年のデヴィッド・フォスターあたりの心の琴線に触れるようなメロディアスの極致のようなエレクトーン・サウンドです。
この曲や、12曲目の[Be Brave]あたりのスロー・チューンはドラマティックな良い仕上がりになってます。

13曲目の[New York City]は彼女とのニューヨークへのドライブのストーリーでしょうか。
ミネソタ州出身のアダムの若い頃の彼女となのか長距離ドライブの浮かれた光景が浮かびます。

15曲目の[Cinematic]はこのアルバムのタイトル・トラックであり、総括と言って良い曲です。
人生は映画の主人公という前向きなメッセージを伝えてアルバムはクローズを迎えます。

こんな風に1曲目のスターへの切符を手にマネージメントかレコード会社へ向かうストーリーは有能なミュージシャンにしか体験できないことですが、それ以外は、アメリカだろうが日本だろうが誰にも起こりうる日常的なストーリーを誇張をせず素朴と言っても良い表現で、時にノスタルジックに歌われている曲が多く、それを盛り上げるエレクトロ・サウンドと共に聴いていると聴いた人が似たような体験を思い浮かべ胸熱になるのでははいでしょうか。

それが苦かったり辛かったりした思いであっても、心の日記を楽しく読むような思い出であっても、このどこまでもドリーミーで心地良く優しく叙情的なアルバムのサウンドを聴いていると前向きに穏やかにさせてくれるアルバムです。

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