Red (Taylor’s Version) – テイラー・スウィフト (Taylor Swift)

Red_Taylors_Version-Taylor_Swift
  • リリース日:2021年11月13日
  • 個人評価:★★★★☆

思いがけずテイラーから届いたサプライズ再録(というより完全版)アルバム第二弾です

今回は2021年にリリースされたテイラー・スウィフト(Taylor Swift)の [レッド (テイラーズ・ヴァージョン)] (Red (Taylor’s Version))を紹介します。
[レッド (Red)]自体は4枚目のオリジナル・アルバムですが、このテイラーズ・ヴァージョンは再録アルバムです。


アルバム紹介

2012年10月22日にオリジナル・リリースされたアルバムなので、まだまだ温故知新という程でもないが、テイラーは[テイラーズ・バージョン]という名前で過去のアルバムを再レコーディングしリリースしていってます。
オリジナル版は日本でもミリオン・セラーを記録し、テイラーの日本でのステータスを確立したアルバムです。

このような再レコーディング版はベテラン・アーティストには珍しい事ではないのですが、テイラーのような今が旬の若いアーティストがこういった取り組みをするのは早いと感じます。
ここ何年も昔の名盤の素晴らしいリイシューが毎年毎月のように立て続けにリリースされますが、10年という短い期間でリリースされた珍しいリレコーディング作品です。

というのは、テイラー自身のバックカタログの原盤権を保有する前所属レーベルのビッグマシーンレコードの買収により、過去6作分のアルバム、または2018年のレーベル移籍前までにリリースしたすべての楽曲の所有権を失ってしまい、買い取ることもできない状態とのことです。
そのような理由もあり、再レコーディングするというプロジェクトに着手しているとのことです。

思いがけぬビジネストラブルから生まれた再録版ですが、そのあたりのビジネス的事情は他のネット情報等に詳しい事が書かれているのでそこを見ていただくとして、現在の音楽版権ビジネス騒動に思いがけず巻き込まれてしまったという訳でリリースと相成ったのが今回紹介するテイラー通算4枚目の[Red]のテイラー・バージョンです。

既に2021年4月にテイラー2枚目の出世作[Fearless]がテイラー・バージョンとしてリリースされ、その第二弾のテイラー・バージョンがこの[Red]です。

オリジナルの16曲+デラックスエディションのボーナストラックとして収められていた4曲に加えて、エド・シーランなど著名アーティストをフィーチャーした9曲の未発表曲をさらに加えて全30曲が収録されてます。

ビジネストラブルがなければこのようなアルバムは出ることは無かったはずですが、テイラーの心境を考えると複雑な気持ちになりますが、ファンにとっては改めて新しい形で好きなアーティストの作品に再度触れられる機会が得られることはやっぱり嬉しいことです。

私とテイラーとの出会い版は[Fearless]であり、作品の素晴らしさとともに、カントリー界の女神降臨!! という一生応援できるアーティストが出来たという喜びで一杯でした。
90年代カントリー・ポップ・ブームのフェイス・ヒルやシャナイア・トゥウェインといったゴージャスなイメージとは全く違うフレッシュさと才能に感動した思い出があります。

ただその後の三作目の[Speak Now]あたりからカントリー色が薄くなり、ポップス・ダンス路線に行ってしまったのが、失望感という程ではないですが寂しい思いもありました。(といってもカントリー大ファンという訳ではないのですが…)

この[Red]というアルバムはさらにポップス・ダンス路線路線を推し進めたアルバムであり、大ヒット曲も出てテイラーの確固たる人気を確立しますが、2012年当時もカントリーから離れてしまった寂しい思いのまま聞き流して終わりという感じでした。

ただ、私も10年の月日が経過しく中で、コンスタントにリリースされるいくテイラーのアルバムを聴き続けていくうちに、カントリーの枠に捉われない若く才能のなるアーティストとしてのテイラーを改めて受け入れるようになってきました。
私にとってのテイラーの好きなところはとにかく”声”なので、やっぱり声と”曲の良さ”が変わらない限りは応援続けていくでしょう。

アルバム・インプレッション

前置きが長くなりましたが、[Fearless]はリリース時から私が大好きなアルバムなので、今回は一旦置いておき、[Red]をテイラー・バージョンとして改めて聴きてみます。

トータル・インプレッション

実はオリジナル版もCDとして持ってるのですが、リリース当初あまり感慨がなかった作品でした。
ただ改めて聴くとオリジナル収録の16曲は今のテイラーの表現力で素直に輝きを増していると感じます。

改めて聴くと、綺麗で可愛く魅力的な声(でもファースト、セカンドアルバムの声は表現力とか抜きに圧倒的に可愛いんだよな…)と、シンガーとして歳を重ねていきアルバム毎に表現力を増していき、なんだかんだやっぱり曲が良いという点で、この[Red]も素晴らしいなと改めて感じました。

テイラー自身も再録にあたって、当時の気持ちが薄れたり、声質が変わらないうちに、オリジナルの良さを生かしつつ、さらに曲の表現を深めた形でオリジナルを超えうるべく再レコーディングしようという気持ちだったと思います。

[Fearless]のテイラー・バージョンのメイン・プロデューサーであるクリストファー・ロウが引き続きプロデュースを務め、オリジナル[Red]に参加したプロデューサーも何名か参加し、オリジナルを完全再現するだけでなく、未発表曲を惜しみなく盛り込んでアップデートされた、これが完全版!と文句なく思えるアルバムとなっています。

トラック・インプレッション

このアルバムの中の世間一般的な代表曲はポップでダンサブルな8曲目の[We Are Never Ever Getting Back Together (私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない)]であり、当時テイラーが女性セレブ・ポップ・シンガーになった証のような曲、という位にしか感じませんでした。

ただ、16曲という多めの曲のアルバムの中盤にうまい位置にハマっていて、良いアクセントになっていて、曲の印象を高めているなという感じです。
他にもダンサブルチューンとして4曲目の[Trouble]なんかもそのタイプです。

それでもあくまで個人的なメインは、オープニング1曲目の[State of Grace]だったり、11曲目の[Holy Ground]のようなリスナーを明るく前向きな気持ちにさせるポップ・ロック・チューンです。

6曲目の[22]は失恋とか嫌な事があっても明るく踊って忘れてしまおうという歌詞ですが、アコギとダンスビートがうまく絡む明るいポップロックに仕上がってます。

ここら辺はデビュー時からのファンにも変わらない安心感を与えます。

またその中でもテイラーが得意にしていたバラッド曲のクオリティがかなり上がっていて耳を惹きます。

3曲目の[Teacherous]や10曲目のギャリー・ライトボディとの共演の[The Last Time] 等もデビュー時の瑞々しくも若さが故に大人が聞くと痛々しさも感じるフレッシュなバラードも良かったですが、22歳時点の大人になったばかりの曲を、30歳を過ぎてさらに成長したテイラーが歌うことでオリジナルとはまた違った印象を与えます。

本編のラスト曲の[Begin Again]もそんな22歳からより大人の女性になったテイラーの魅力を感じるバラードです。
失恋の歌なのでしょうが、リアルな実体験を歌にするというテイラーらしい曲ですね。
静かなアコースティックな何気なさそうでありながら切ない曲なのですが、歌詞の中にちょっとしたこんなフレーズがあります。

He said he never met one girl who had as many James Taylor records as you but I do.

彼は、君ほどジェームス・テイラーのレコードをたくさん持っている子に会ったことはないとよ、と言ってたけど私そうだよ。

なんてフレーズが私のような50歳になる中年世代にはグッと来て、エモーショナルな曲に仕上がってます。
(エモいという言葉をどういう時につかうのかがイマイチわからないのでこう書いてます…)

このたくさんの曲の入ったアルバムの中で本編とは別のハイライトとなるのが[From the Vault] と記録されている9曲のアルバムに収録される事がなかった未発表曲です。

その中でもなかなか魔法のような80年代ポップスの香りが漂う[Message In a Bottle]がヒットチャートを賑わし、エド・シーランとの共演の[Run] あたりも話題は集めてますが、ハイライトとなるのはラストの [All Too Well 10Minutes Version]でしょう。

オリジナル・アルバムでは、5曲目という、ポップな曲が続いたので少し落ち着いて聴きましょう、という位置にあるリリース時にはあまり目立たないといっても良い曲だと思うのですが、[From the Vault]では長いアルバムのトリを務める重要な曲となっています。

Taylor Swift – All Too Well: The Short Film

この曲にテイラー自身が並々ならぬ思い入れがあるようで、15分近い映画のようなショートフィルムも作成されてます。
この曲を聴くと映画のようなストーリーを持つ歌詞の曲を、そのまま映画に仕立ててしまうテイラーにはカントリー界の歌姫を飛び越えてしまうのは当たり前だと思わせられます。

その他にも[From the Vault]には、カントリー・シンガーのクリス・ステイプルトンとのデュエットでは久しぶりのカントリー・バラード[I Bet You Think About Me]や、ポップでメロディが軽やかな[The Very First Night]等は、今ままでのテイラーらしいと言っても良いカントリー・ポップ路線も聴くことができ、お蔵入りの曲とは思えないヴァラエティ豊かな初期のファンからのファンへのプレゼントといった感じの未発表曲となっています。

最後に・・・

2023年7月には新たなテイラー・バージョン版である[Speak Now] がリリースになってます。
名作セカンド・アルバムの[Fearless]の雰囲気を微妙に引き継ぎながら新たな世界へ挑戦していった第一歩のこのアルバムもまだ未聴なのですが楽しみにしておきます。
残りの作品もまだありますが、特にファーストアルバムがどのようなテイラー・バージョンになるのか興味があります。

参考サイト

度々参考にしている[Udiscovermusic.jp]には全曲ではないですが、主要曲のテイラーによる楽曲解説が掲載されています。こちらもアルバムと一緒にどうぞ。

2012年に発売され日本でも100万枚を超える売り上げを記録した『Red』を再録音して、9曲の未発表の新曲が追加されたこのアルバムの収録楽曲からピックアップされた12曲について、テイラー本人による解説を掲載します。

テイラー・スウィフト最新作『Red (Taylor’s Version)』本人による楽曲解説

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