- リリース日:2021年1月29日
- 個人評価:★★★☆
カントリー・ミュージックの”今”の形が凝縮されています
今回は2021年にリリースされたモーガン・ウォレン (Morgan Wallen)の7枚目のオリジナル・アルバムの [アルバム名] (Album Name)を紹介します。
アーティスト・アルバム紹介
モーガン・ウォーレンはアメリカ テネシー州出身のカントリーシンガーでありソングライターです。
アメリカの アマチュア・アーティストのコンテスト番組[The Voice”に参加したのをきっかけに注目を浴び、2018年リリースのデビュー・アルバム[If I Know Me] がじわじわと話題になっていき、米国ビルボード200で最高10位、トップカントリーアルバムチャートでは1位を記録する大ヒットとなります。
この新作は2ndアルバムであり、2022年1月にリリースされ、全米アルバムチャート初登場1位を獲得し、カントリー・アルバムとしては過去最大のストリーミング総計を記録しており、現在カントリー界トップの人気と売上、ストリーミング再生回数を記録し、既にスーパースターと言って良い人でしょう。
子供の頃からカントリー・ミュージックを聴いて演奏していた訳では無く、ロックやヒップホップを好んで聴いていたようですが、高校時代からカントリー・ミュージックを好きになったようです。
90年代以降のカントリーミュージックはポップロック風で、カラッと乾いたサウンドと陽性のわかりやすいメロディーを持つアーティスト、曲が結構あるのですが、日本の演歌でいうコブシを回すというか、歌い回し方に鼻につき、アメリカの大陸的開放感への憧れから好きなジャンルなのですが、今まで多くのアーティスト、アルバムを聴いているかというとそうでもなかったりします。
一時期、良いアーティストいないかなと探していた頃もあったのですがピンとくるシンガーや曲に出会えず、耳に入ってくる曲に軽くアンテナを張っていた程度でした。
その中で久々にこの人良い! と思ったのがモーガン・ウォレンです。
2018年リリースのデビュー・アルバム[If I Know Me] の中の[Chasin’ You] という切なく哀愁を帯びながらも湿っぽくない、アメリカの大陸的なエキスがぎゅっと詰まった魅力を持つミディアムタイプのバラード曲が大好きで、アルバムも佳曲揃いで、私の中でその年ベストに入る程に好きなアルバムだったので次作を楽しみにしていました。
声質や歌い方もカントリーシンガーというより、アメリカンロックシンガーぽく、カントリー臭さがあまり感じられないのが良いです。
音楽的には伝統的なカントリー・ミュージックに根差したサウンドなのですが、デビュー・アルバムはロック色が強く、ラップ的な早口でまくし立てる曲もあったり新しい要素も取り入れているので、私のようなコアなカントリー・ミュージックファンではないロック好きな人にも好かれるアーティストでは無いかと思います。
アルバム・インプレッション
今作は、前作の[Chasin’ You] のような自分の中でキラーチューンになる曲はなかったですが、粒揃いの曲が詰まっていて、カントリー・ミュージックの王道に今風のサウンド要素をうまく取り入れた佳曲集となっています。
そしてタイトル通りボリュームたっぷりの全30曲のダブル・アルバムです。
Apple Music のBonusバージョンには3曲がさらに追加されています。
モーガンのファンの年代はわかりませんが、ルックスが良いので女性ファンもいるとは思いますが、こういう酒と女と車が歌詞に出てくる男臭い感傷的なラヴ・ソングの歌詞はアメリカの中年以上の男性が好むイメージなのかなぁと思ったりします。
(軽く歌詞見ながら聴いた程度なので、違ってたり、もっと深いものだったりしたらごめんんなさい…)
Disk 1はじっくり聴かせるバラードタイプ中心になっていて、日本にいると秋冬あたりに聴いているとほっこり暖かくなるような曲が多く、バラードでもカラッとしているのでアメリカにいて聴ければ季節は問わずグッと来そうです。
特にバラード曲の歌詞はバーで酒を飲みながら、愛する女性、別れた女性との未練を綴ったり、といった至ってアメリカンなものが多いようです。
バラード曲も多いですが、私としては、アコースティックギターが秀逸な3曲目の[Somebody’s Problem]から[More Surprised Than Me], [865]あたりの明るいけど哀愁味を帯びたメロディの曲が好きですね。
バラードや比較的スローチューン中心に曲が続き、1枚目ラストは、2枚目へ繋ぐ、1枚目ではこの曲のみのいかにもカラッと明るいアメリカントリーポップロック[More Than My Hometown]で閉めます。詩は街を出ていく大切な人(友人?家族?恋人?)を見送る応援歌ですかね。
Disk 2は、ヴァラエティに富んだ曲が並ぶのは変わらないですが、曲の中心がバラード曲よりもアップテンポからミドルテンポの明るめのカントリー色の強い曲が並びます。曲によってはブルースやロックン・ロールっぽい曲も多く、早口でまくし立てるヒップホップ要素を取り入れているヴォーカルが心地よかったりします。
2曲目の [Redneck, Red Letters, Red Dirt] は早口でまくし立てるモーガンの勢いのあるヴォーカルとご機嫌なロック・ギターがカッコ良い曲です。
さらに3曲目のアルバムタイトル曲である [Dangerous], 5曲目の[Blame It On Me]あたりのいかにもアメリカの陽気なカントリー調のロック・ソングがが出色です。
典型的なラヴ・バラードは少な目ですが、ラストのアコースティックなアメリカン的なカラッとした哀愁味を帯びたロッカバラードである [Quitting Time] はグッとくるメロディを持っていてこの曲で本編はしっとりと閉まります。
どちらかというとDisk 2は、歌詞も皮肉が効いてたり、モーガンの内面が垣間見れる歌詞が多いようです。
さらっと書きましたがボーナストラックを除いて全30曲。
これだけ曲数が多いとお腹いっぱいで、散漫な印象や、さすがに詰め込みすぎ感があり、アルバムの統一感をあまり意識していないとさえ感じてしまいます。アルバム自体がトラックリストというか、心地よさ重視の曲順という感じです。
革新的なサウンドのアルバムではないですが、一気聴きしようと思わずに、Disk1,2と独立したアルバムとして聴いてみたりすると更なる良さが感じられるかもしれませんが、Disk1から2へ順番通りに曲を聴いていくことにとらわれず、自分のお気に入りの曲をピックアップし、プレイリストを作ったりして聴くことや、曲をたくさんつくったから好きなように聴いてくれとリスナーにアルバム自体の聴き方を任せることを前提にしたアルバム制作のようにも思えました。
アメリカ本土でのカントリー・ミュージックの聴かれ方はラジオが主という印象が強いですが、今のサブスク時代もありカントリー音楽の在り方というのも変化していることを感じさせるアルバムでした。
アルバムのスタイルとしては今までの初めから終わりまでじっくり聴いてなんぽという概念を覆しているようなところが私のような昔ながらの音楽アルバムの捉え方をする人間には戸惑いを感じさせつつも、これからのアルバムの在り方を感じさせる作品でした。
おわりに・・・
モーガン・ウォレンやこのアルバムの情報やレビューをネットで探してみましたが、人種差別発言の話題が大半を占めていて、さすがに通り一辺倒で情報量豊富だったり、感銘を受けるようなレビューは日本のサイトでは見当たりませんでした。
90年台のポップ・カントリー・ブーム時のフェイス・ヒルやシャナイア・トゥエインといった美しく華やかな大スターでさえ来日公演をしていないことを考えるとモーガンを日本で観れる日は期待できないのかなぁと考えつつも淡い期待は持ち続けたいと思います。
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