2023年9月 今月のこの逸曲 (邦楽編)

more_thanwords-hitsujibungaku

今月から始めたこの「今月のこの逸曲」シリーズですが、邦楽編は情報量が多いので洋楽編よりもサラッと決まるかなと思ったのですが、結構選曲に難儀しました。

4曲目まではそうでもなかったのですが最後の1曲が決まらず選曲だけで1時間以上はサブスクで色々聴いて迷いまくって決まったのが5曲目です。

企画がベタですが急遽思いついたので、来月以降は日々意識を持って音楽にアンテナ張って行こうかと思います。

ただそれぞれ5曲を絶対挙げて書こうとは決めてないので、来月以降は気楽に行きます。

Gold 〜また逢う日まで〜 (Gold) – 宇多田ヒカル (Hikaru Utada)

  • リリース日:2023年7月28日

今回は2023年7月末にリリースされた宇多田ヒカルの [Gold 〜また逢う日まで〜]を紹介します。
同時期に公開となった映画[キングダム 運命の炎]の主題歌です。

宇多田ヒカル「Gold ~また逢う日まで~」Music Video

個人的には宇多田ヒカルの、特に最近の曲を言葉で感想を書くということ自体が非常に難しいです。
決して先鋭的な歌詞や音楽という訳ではないのですが、なんとも形容し難い現実と微妙に乖離した不思議な世界観を感じます。

映画の内容と音楽・歌詞がどのようにリンクするのかは、映画未視聴及び原作マンガもかなり前に途中まで読んで止めてしまったのでわかりませんが、サウンドの路線としては、今のところの最新アルバム[BADモード]の延長にある極めて現代的なR&B/エレクトロ路線でありながらアンビエント的なサウンドです。

そこに宇多田ヒカルの声が乗った時に魔法にかかったような心地よさと、時を超えるが如く、音に輝きを封じ込んでしまうところが相変わらずが素晴らしいです。

ピアノをバックにスローな過去を振り返るようなから展開で始まり、盤からアップビートになっていくに連れてヴォーカルもビートに気持ちよく乗って行きながら未来を見据えていくような淡い希望と「涙はお預け また逢う日まで」という何かを吹っ切るようなフレーズを歌いながら、フっと曲が終わるところが一遍の短編小説を体感しているように感じます。

PVは新宿の繁華街なのに誰もいないストリート(通行人が二人程映っているのを見かけましたが)や店を、彼女が一人歩いていったり、佇んだりという現実的に存在する場所なのに不思議と違う世界にいるような感覚の映像に仕上がってます。

Workin’ Hard – 藤井風 (Kaze Fujii)

  • リリース日:2023年8月25日

今回は2023年8月末にリリースされた藤井風の [Workin’ Hard]を紹介します。

この曲は、「バスケットボールワールドカップ」のテーマソングですが、まぁ、「がんばれ〜、優勝だ〜」的なメッセージはさすがにないだろうなと思いつつ、「藤井風が「Workin’ Hard」とはこれいかにと、不思議な思いで聴いてみました。

Fujii Kaze – Workin’ Hard(Official Video

個人的にバスケにあまり興味がないのでTVでこの曲を聴く機会は結局ありませんでしたが、曲としてはスポーツのテーマ曲にはあまり似つかわしくないクールで重めのリズム主体の曲です。

[Workin’Hard]というタイトル通り働くことがテーマの曲です。

勤労というのは生きる人全てに共通することなのですが、意外と歌のテーマとして取り上げられるのってなかったなぁと思いました。

現代社会の人達で仕事をしている人は様々な職種で地位で給与で働いていると思いますが、どこに属している人てもこの曲の捉え方は変わるのではいでしょうか。

個人的には、「なんも無くたっていいや、結果なんぞかったりーわ」「Trust the process and be brave」といった言葉が引っかかりました。

私もサラリーマンですが、人間なんて気分が落ち込んでいたり、疲れていたり、単純に今日やる気出ないなという日は仕事に集中できない時がありますが、うん十年間、自分なりに仕事は頑張ってきたと思います。
だけど結果を出せ、結果が出てないと言われることは気分が沈むと言うよりも時には恐怖を感じところまで行ってしまうかもしれません。

また、必死こいて頑張っている人達に対して、「めちゃ頑張っているなぁ」と思いつつも「俺だってちゃんとやっているんだ」って思うことって個人的にもよくあります。

結果主義自体を全て否定するとは言いませんが、プロセスを信じて胸を張れというこの「Workin’ Hard」を聴くことで気分が軽くなります。
藤井風らしくない歌詞の歌ではあるのですが、なんかとても身近に感じることができる曲です。

BLOW feat. Safeplanet – ロット・バルト・バロン (ROTH BART BARON)

  • リリース日:2023年9月22日

シンガーソングライターの三船雅也のユニットであるロット・バルト・バロン (ROTH BART BARON)のニュー・シングルです。
タイを代表するインディ・ロックバンドSafeplanet(セーフプラネット)とのコラボレーション曲で、10月18日にリリース予定のニュー・アルバム[8]からの先行シングルのようです。

ROTH BART BARON – BLOW feat. Safeplanet (Official Video)

ロットは今月梅雨時期に行った日比谷公園での音楽祭で見る機会があったのですが、40分程度の短めのライヴを見て感激してしまいました。

その日は台風一過後のよく晴れた夕暮れの日比谷公園の小公会堂というシチュエーションも良かったのですが、音源では静粛とも言えるサウンドを、熱いソウル・アコースティック・ロックに変換した演奏でその場の空気を支配したといっても良い素晴らしいライヴでした。

三船さんのファルセット・ヴォーカルながら力強さを感じる声にライヴが終わった後も興奮が止まらず、数日ロットを聴き続けてしまいました。

今までのアルバムの曲はどちらかというと静粛なアコースティックを核とした音楽というイメージでしたが、今回はエレキ・ギターが全面に出ていて、相変わらず音も詰め込んではいないながらも色彩豊かで、ロットにしては賑やかさがあるライヴ映えしそうな曲になってます。

アルト・サックス的な響きから始まりエフェクトがかかったクリーンなギター・ソロに流れていく間奏が秀逸で、後半のロック的かつソウルフルな流れが良いです。

More than words – 羊文学 (hitsujibungaku)

  • リリース日:2023年9月27日

今回は2023年9月末にリリースされた羊文学の [More than words]を紹介します。
この曲は「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」第二期「渋谷事変」のエンディング・テーマです。
アニメも原作も未視聴・未読ですが、一聴してあまり原作と関連性がなさそうだったので取りあげてみました。

羊文学 – more than words (Official Music Video) [TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」エンディングテーマ]

羊文学は気になっているバンドですが本格的に聞き始めたのは2022年にリリースされた「our hope」からです。

そんなバンドを聴き出してまだまだな私が語るのも何ですが、こういったオルタナな香りを持つバンドが人気のアニメのテーマ曲とタイアップすることで世間的な知名度が上がってくるのは素直に嬉しいことです。

オルタナティブ・ロックだけどインディ的なとっつきにくさがないという言うのが魅力のバンドです。

序盤はバス・ドラムの四つ打ちと低音ですがクリーンなギターのリフから始まり、ハイハットが絡んできます。

中盤からギター、ドラム、ベースが一体となり、リズムも多彩に展開され、クリーンなアルペジオとシュゲーズ的に荒れ狂うギターが交互に展開されていきつつ、序盤の四つ打ちドラムとクリーンなギター・サウンドが基本的にこの曲を構成しています。

人気アニメのタイアップということもあってか、クラブ・サウンド的な洒落たアレンジがさりげなかったりして今までなかった新境地ですが羊文学らしいサウンドになってます。
そして凛とした芯の通った塩塚モエカのヴォーカルがバンドの個性を引き立たせるます。

アニメの舞台が渋谷でPVでも舞台となっていますが、夜の渋谷のストリートの都会の喧騒感と、ディスコミュニケーション感が街の風景とうまくマッチしているのではないでしょうか。

夜の喧騒が終わった後に、気持ちを明日に向けさせてくれるロック・ナンバーです。

口の花火(Mouth Flash) – 長谷川白紙 (Hakushi Hasegawa)

  • リリース日:2023年7月25日

次は少し前ですが7月末にリリースされた長谷川白紙の[口の花火]を紹介します。

フライング・ロータスが主宰するレーベルであるブレインフィーダーと日本人としては初の所属アーティストとして契約をしており、そこからの世界デビューとなる第一弾がこの曲です。

長谷川白紙 – 口の花火 (Official Music Video)

サブスクで今のヒット曲を聴きながら今月最後の紹介曲を探したのですが、今聴かれている上位にいるヒット曲を聴いてると凡庸とは言いませんが正直ピンとくるものに出会えず耳がとろけそうな中、明らかに異質で刺激的なこの曲にしようと思いました。

歌詞は何を歌っているのだがさっぱりわかりません。
途中でそんなことはどうでも良くなってきます。

ただ音は刺激的で、変則的なドラム・ビートの連打から始まり、ループするシンセ・サウンドにベースが絡んできて、個性的な長谷川の浮遊感の浮世離れしたファルセット・ヴォーカルが乗ってきます。
かなりアッパーなファンキーなダンス・チューンで、プログレッシヴで混沌としながらも、独特なリズム・ループが気持ち良くなり聴いていると病みつきになってきます。

なんか今、プリンスが日本に生まれてたらこんなサウンドを作るんではないかという軽妙さと心地よさと刺激を持つ曲で、アヴァンギャルドだけどしっかりポップという今の日本のアーティストの中ではかなり独自の世界を持つ人です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました