ソー・ハッピー・イッツ・ハーツ (So Happy It Hurts) – ブライアン・アダムス (Bryan Adams)

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  • リリース日:2022年3月11日
  • 個人評価:★★★★☆

今回は2022年にリリースされたブライアン・アダムス (Bryan Adams)の15枚目のオリジナル・アルバムの [ソー・ハッピー・イッツ・ハーツ] (So Happy It Hurts) を紹介します。

さすがにブライアンのようなベテランになるとどれが企画物だがベストだが分からないなってきてしまい、純粋なオリジナルアルバムだと今作は15枚目のようです。
14作目だと思ったのでどっかで計算狂ったかな。


私にとってのブライアン

ブライアン・アダムスは私が中学生の頃、洋楽ファンになって初めてライヴに行ったアーティストです。
4枚目のアルバム レックレス(Reckless)リリース後で、初めてお金を払って見に行った洋楽アーティストでした。
1985年10月の日本武道館です。

当時は洋楽好きは学校にはいてもなかなかライヴを見に行くまでの友達がいなくて一人で行った記憶があります。
武道館は当時の家から電車で1時間以内で行けたのですが我ながら中学生が一人でよく行ったなぁと今更ながら思います。

ライヴはワーワー騒いで楽しむものと思ってましたが、中学生が一人でライヴに行くという心細さと、初体験のライヴだったので萎縮してたのか、かしこまって見てしまいた気がします。
それでも大好きなアーティストだったので大感激したのを覚えてます。

83年のカッツ・ライク・ア・ナイフ(Cuts Like A Knife), 84年のレックレス(Reckless), 87年のイントゥ・ザ・ファイア(Into The Fire)の3枚のアルバムは私にとって青春の宝物みたいで、その頃、一番好きなアーティストだったと思います。
後追いで聴いた81年のセカンドアルバム[You Want It You Got It]も荒削りだけど青春の煌めきって感じが当時レコードから迸っていました。

その次の1991年のウェイキング・アップ・ザ・ネイバーズ(Waking Up the Neighbours)はブライアンのアルバムの中で一番ヒットというか世界中で大ヒットしたモンスターアルバムだったのですが、何故か私の心にヒットするものがなくて個人的にはがっかりした記憶があります。
大ヒットシングルの[(Everithing I Do) I Do It for You]も心に引っかかりませんでした。

多分好みの問題だとは思いますが、今聴いても軽く能天気になり過ぎてあまり好きなアルバムではありません。
そしてこのアルバムでプロデューサーがボブ・クリアマウンテンからジョン・マット・ランジに変わったのですよね。
音がシャープすぎたのもブライアンにしては妙にかっちりしすぎて、逆にブライアンの良さが殺されているような気がしたんですよね。
後、曲数が多かったのと自分にとっては良い曲がなかったというのも一枚通して聴くには辛いアルバムでした。

その点、ボブ・クリアマウンテンとの相性って完璧だと思ってて、ブライアンの元気さやその時放っていた輝きをレコードに閉じ込めたような…若さゆえの危うさとか甘酸っぱさが鮮明に音に詰まってました。
そして本来のブライアンの明るく温かい人柄をアルバムに真空パックしたような…そんな名作ばかりでした。

それ以降、私もマンチェスターとかブリットポップ等のUK系に行ってしまったり、そのうち90年代中頃になると洋楽自体を熱心に聴かなくなってしまったので[18 til I Die]以降のブライアンのアルバムは聴かなくなってしまいました。

アルバム・インプレッション

[18 til I Die]以降聴いてないと書いたのですが、2015年の[Get Up]は2019年の[Shine a Light]は、好きなアーティストだったので聴いていて、80年代のブライアンらしい元気さが戻ってきていて、なんか吹っ切れてきたなと好印象を抱いてました。

ですが今回のソー・ハッピー・イッツ・ハーツ (So Happy It Hurts)

今回のアルバムはセールス的にも上向きだったようで、最近のアルバムはアメリカではトップ40まで入ることはなかったですが、今作はBillboard US Top Album Sales では26位まで上昇したようです。

ヨーロッパ各国でも概ね好調なようで、特に安定した人気を誇るイギリスではベスト3まで行きました。
イギリスってロックのみならず本国から先鋭的な音楽を生み出しているのですが、ブライアンのようなストレートなアメリカン・ロックが受け入れられる土壌もあるというのが懐深いです。
聴いている世代は若い世代ではないとは思いますが、素直に良いものは良いと支持するところがあるのかなって思ったりします。

内容はというと、今までのアルバムとは一味も二味も違うと感じました。

どの曲も80年代の全盛期の頃に引けを取らない曲達が素晴らしいです。
とにかく今回はシンプルで飾り気無し。
不要なものを一切排除してブライアンらしさの核の部分を提示したと言って良い内容です。

殆どの曲がギター・ベース・ドラムスとブライアンのヴォーカルを中心としたシンプルな構成です。

そしてPVを見てもルックスがとにかく若いです。
歳をとっても年相応にカッコ良いアーティストは”良い歳の取り方をしている”と良く書くのですが、ブライアンの場合はそもそも歳を取ってないと言っても良いくらい、若々しいです。
ヴィーガンらしいのでそこら辺も影響しているのかな。

プロデューサーはブライアンと、約半分の曲を前述の今ひとつ好きになれなかった[Waking Up the Neighbours]を手がけたジョン・マット・ランジと共同プロデュースしています。
でも今作は曲自体が全て素晴らしいのと、シンプルなアレンジがクリアーな音にマッチしていてしっくり来ました。

トラック・インプレッション

アルバム内の曲に目を向けてみます。

1曲目の[So Happy Its Hurt]は”痛いほどにハッピー”という意味のアルバム・タイトル・トラックです。
まさに自由と自立性の謳歌のような開放的な勇気と元気を貰えるロックナンバーです。
歌詞に出てくるように快晴の日にトランスカナダハイウェイをオープンカーで走っているような、気分を高揚させてくれて超ハッピーになれます。
この曲ブライアンの新たな最高傑作曲でしょう。
アルバムの期待度が増します。

Bryan Adams – So Happy It Hurts

2曲目[Never Gonna Rain]はブルージーな曲になりますがメロディが良いのでテンションは全く下がりません。
PVではブライアンのグルーヴィーなベースとドラムスとギターのリフというグルーヴに重点を置いた曲。
この構成でのシンプルなスタジオライヴPVを今作のトラックでは多く作っています。
今までのどの曲に似ているという感じはしないでブライアンにして珍しいなと思わせる曲で、アルバムの2曲に持ってくるところが粋です。
この曲はブライアンが弾くベースラインがとにかくカッコ良いです。
変わらず盟友キース・スコットがギターを弾いているのがブライアンとの絆を感じさせます。

3曲目の[You Lift Me Up]はバラードですが大仰にならず飾らない感じが良いです。
今作のバラードは家族愛をテーマにした曲が多いですね。
年齢相応の中年・壮年の粋に入った家族愛をシンプルな言葉で歌っています。

[Never Gonna Rain]もそうですがこの曲もPVが作られていて、ヴォーカルとベースのブライアンとギターをドラムスのシンプルなトリオ構成での演奏となっています。
クリーンに響くキースのギターもベースもドラムをはっきり聴こえる音像はクリアーだけど温かみのあるサウンドになっています。

5曲目の[Always Have, Always Will]は今までなかったようなレイドバックしたブライアンですが、聴いていると優しさに包まれるようメロディアスな曲です。
個人的にこのアルバムのこの位置にあるのがナイスと思わせる大好きな曲です。

6曲目の[On The Road]もハードなギターリフから始まる勇ましいロックナンバーです。
PVではブライアンが一人寂れたストリートを黒い革ジャンを来て歩いているだけのハードボイルドスタイルがカッコ良いです。このPVは本当にシブいです。
「俺は戻ってきた、今にも爆発しそうだ」とシンプルに決意を歌う曲です。

Bryan Adams – On The Road

そして、なんと言っても7曲目の[Kick Ass]
1曲目の[So Happy Its Hurts]に続いてこれがこのアルバムの一つの山場、ブライアンの新たな代表曲となりました。
もうブライアンの今までの作品の中で一番のハード・ドライヴィング・ナンバーと言って良いほどのカッコ良い曲。
ここにきてライブでの大盛り上がりが目に浮かぶ代表曲をまた作り上げたという感じです。
PVもオープニングの神の使者らしき老人にブライアン自身を揶揄するようなセリフを話させてコメディっぽく始まり、真っ白な狭いスペースの中に5人の真っ白なタイツを纏ったおっさんが狭っ苦しい中、熱いライヴ演奏が展開します。
ダサカッコ良くてもう最高です。

Bryan Adams – Kick Ass

そしてラストの[These Are The Moments That Make Up My Life]も海岸を一人歩きながら愛犬?と散歩するブライアンをワンカメで追っていくシンプルなものです。
今作のPVはバンド演奏だったり、全てシンプルに仕上がってますが、6曲目の[On The Road]やこの曲のようにシンプルが故の味があります。
写真家としても活動するブライアンらしいどこか芸術性を感じさせる仕上がりのPVです。
歌詞も奥さんを中心に家族愛を歌うって感じです。

Bryan Adams – These Are The Moments That Make Up My Life

おわりに・・・

私だけが思ったのかもしれませんが、60歳前半にして最高傑作をまた作り上げたブライアン。

この作品には80年代の大ヒット作を連発していた時のヤンチャなロックンローラーの輝きを放っていた若さの象徴のような煌めき自体はないかもしれません。

それでも歳をとって成熟した今の等身大のブライアンのシンプルなロック・ソングとバラードには熱くなり感動せざるをえませんでした。

そして逆に和訳をしてしまうと分かりづらくなると言っても良いシンプルな言葉で綴られた歌詞は、小中学生レベルの英語がわかれば日本人でもすっと頭に入ってくるのでストレートにそのまま英詞を追って聴いています。

そういえば2023年に来日公演やってたのですよね。
その前にしっかりこのアルバムを聴けてたら問答無用に行ってたので惜しいことをしました。
それでもブライアンは5年位置きに来日してくれるので今後こそは絶対ライブを観に行きたいです。
(なんかこの終わり方多いな…)

参考サイト

Billboard Japanのサイトに短いけどこのアルバムリリース時のブライアンのインタビューがありました。後でじっくり読もうっと…

完成したばかりの最新アルバム『SO HAPPY IT HURTS』は、40年以上にわたる音楽キャリアのなかで常に追求し続けているロックンロールへの愛を感じる仕上がりになった。先行きの見えないこの時代の道しるべになるような力強い楽曲の数々。また本人撮影のポートレートも含め、彼の変わらないクールさと、経験を重ねたことによる深い味わいも滲んだ内容だ。

ブライアン・アダムス『SO HAPPY IT HURTS』インタビュー | Billboard Japan

そして、今回は私と似たような感想を持ったブライアンファンの方々のブログを記載後に拝見させていただきました。
AmebaのJonさんの[La CULTURA]にはTwitterでのブライアンの各曲コメントがありましたので紹介です。和訳もしてくれてて重宝します。

Bryan Adams『So Happy It Hurts』| Ameba

no+eの大阪主夫さんのブログも楽しく拝見しました。ブライアンは根強いファンがいることを実感です。

変わらずロックしてくれている姿に目頭が熱くなる 『So Happy It Hurts』 BRYAN ADAMS | no+e

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