ミッドナイト (Midnights) – テイラー・スウィフト (Taylor Swift)

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今回は2022年にリリースされたテイラー・スウィフト (Taylor Swift)の10枚目のオリジナル・アルバムの Mignights (ミッドナイツ)を紹介します。
日本公演開始1週間前の滑り込みセーフでやっと公式リセールからチケットを入手できました。
セカンド・アルバムのFearlessからテイラーを聴き続けて約15年。
今回はどうしても来日公演に行きたかったので、やっとこれで気持ちが祝テイラー来日公演という気持ちになれたこともあり、遅ればせながらリリースから既に1年半近く経ってしまいましたが目下の最新作のインプレッションです。


2006年にセルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースして約17年で10作目。
2019年に7作目の[Lover]というポップ・スターとしてのキャリアの一つの頂点である代表作をリリースし、コロナ・パンデミック真っ最中の2021年には[folklore], [evermore]ではインディ・フォーク、オルタナディブといった世界を旅をしました。
それらはテイラーにとって自身の”歌”、特に詩の世界の更なる深化をさせてきました。

そして精力的な制作活動に力を注ぎ続け、ポップ・スターだけでなくアーティストとして世界中から高い評価を得ることになったテイラー・スウィフトが2022年10月にリリースしたのがこのMidnights(ミッドナイツ)です。

プロデュースはテイラーと盟友のジャック・アントノフといういつものタッグが中心の布陣です。

テイラーはこのアルバムを真夜中に想いに耽ることを歌にしていったとのことです。
Wikipediaにはテイラーのコメントして下記のように記されています。

「このアルバムは真夜中に書かれた曲を集めたもので、恐怖と甘い夢の中の旅のような作品になりました。眠れずに行ったり来たりしたり、魔物に直面したり。時計が12時を打つ時にもしかしたら自分自身に出会えるかもしれないと願って、夜中に寝返りを打ちランタンを灯しながら探し続けることを決めたすべての人のために」

ミッドナイツ (テイラー・スウィフトのアルバム) | wikipedia

真夜中の世界というと、喧騒が去り静けさを纏い出し、空気が冷んやりしてクリーンさを取り戻した街の夜の世界を私は真っ先に想像してしまうのですが、これは一日の生活が過ぎて興奮が去った後にベッドの中で落ち着いた時に、自分と向き合いふと考えてしまったり、溢れ出てくる想いを書き綴っていった印象を受けます。

このアルバムがリリースされたのは2022年秋で、その頃は世界的にパンデミックもまだ去ってない時期です。
決して明るい雰囲気のアルバムという訳ではないですが、アフター・コロナを予感させるような見通しの良い未来が見えてくるような、明るくもなりきれないけど、この先の落ち着きを取り戻す未来を予感するような雰囲気のアルバムに仕上がってます。

音数が少ないながらもエレクトロの印象的なサウンドやエコーがアンビエントで安らぎのあるおとぎの国に誘うサウンドになっています。
この音作りがとても新鮮で、聴いている時間はリスナーそれぞれが想像するミッドナイト(真夜中)の時間や色を想像できるような、ここに来てて更に新しい世界を作り出したという印象を受けました。
私はというとこのアルバムを通して、深い青に星がまばらに煌めく世界を想像していました。

とはいってもテイラーのヴォーカルは抑えめといってもエモく表現力が豊かで聴いていると心に引っ掛かりを残すのでアンビエント・ミュージックのように眠りにつく時に聴く音楽とは異なります。
特に浮遊感のあるシンプルなエレクトロはこのアルバムを特徴つける秀逸なアレンジがされていて、あくまでメロディを構成するのはテイラーのヴォーカルとコーラスなので詩がリスナーの耳に届きやすいというのが特徴です。

テイラーのヴォーカルが比較的抑揚を抑えたヴォーカルになっていることと、トラックが非常にシンプルなので、聴くものにとってはヴォーカルと詩の世界に自然と耳が行き、気持ちを高揚させもせず落ち込ませもしない一連の短編小説集かポエムを読んでいるような印象を与えるところが秀逸です。

初めて聴いた時は、大分地味だなという印象でしたが、何度か聴いた後に感じるのが、真夜中(Midnight)というコンセプトに基づかなければ単なる佳曲集になってしまうところをコンセプト・アルバムとしてサウンド・歌詞の制作をすることで、音楽と詩が一体となった体験型のオーディオ・ブックのような統一感が強まってきます。

それにより、今まで培ってきたテイラーのアーティストとしての成長をさらに印象付けるアルバムとなっています。

歌詞はいつものように恋愛だったり人間模様が中心です。

恋愛の曲では、1曲目の[Lavener Haze]は1950年代に流行した恋に落ちている様子を表す言葉であり、噂やゴシップに惑わされず、恋の美しい感情に純粋に浸りたいという、常にメディアに私生活を晒されて翻弄されるテイラーの願いや、メディアへの警鐘のように聴こえます。
この曲を含めて[Anti-Hero],[Bejeweled]の3曲はストーリー仕立てのPVとして制作されています。
サウンドはシンプルでもPVは凝った作りになっているので観てて飽きないのと曲の世界観をより感じることができます。

Taylor Swift – Lavender Haze (Official Music Video)

このアルバムで私が好きな曲が3曲あります。

まず2曲目の[Maroon]です。
マルーンという深い赤色を想起させる文章や言葉を歌詞に並べて歌われることで、忘られない人への強い想いを感じさせます。
アルバムの中でも情感的に歌われるラヴ・ソングで、ストリー性と赤の色彩感を強く感じ、30歳を過ぎたテイラー・スウィフトという恋愛詩人の才能と世界観を強く感じる曲になっています。

5曲目の[You’re On Your Own, Kid]は初期のテイラーを思い出すアコースティックタッチの曲です。
曲もその時に好きだった人との思い出を交えて若い頃を思い出しながら、今までの人生の苦い気持ちを振り返るような、正に真夜中にふと考えてしまうことが歌われてます。

そして本編ラスト13曲目の[Mastermind]
これは恋に落ちた二人の側の一人が仕掛け人”Mastermind”(首謀者)であることが歌われています。
これもテイラーの初期のアルバムの最終楽曲であるFearless での[Change]や、やSpeak Nowの[Long Live]ようにラストで明るく気分を上げてくれるメロディが心地良いです。

そして、このアルバムは追加曲を含めた[3am Edition],[the Til Dawn Edition]という真夜中に纏わる2つのバージョンでは、[midnights]を制作する過程で試行錯誤で作られた曲を追加されていて、曲が単なるアウト・トラック集ではない完成度の曲となっています。

ここでもどうしても[Hits Different]のようなカントリー・ポップタッチのメロディアスでセンチメンタルな曲にどうしても惹かれてしまう私です…

Web上で比較的じっくりとこのアルバムをレビューしているのが mikiki のサイトでした。
no+eにも良いレビューがあったので紹介です。

眠れない夜のメランコリックな時間、遠い記憶に想いを馳せて……またも作風を転換して桁外れのヒットを記録中の新作『Midnights』が放つ麗しい魅力に迫る

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)『Midnights』またも作風を転換、桁外れのヒット中の新作が放つ麗しい魅力に迫る | mikiki

わたしは昔からTaylor Swiftという歌手が好きだ。
いや、歌手というよりもTaylorの場合は表現者であり、詩を紡ぐ人と言ったほうがしっくりくるかもしれない。

Taylor Swiftはやっぱり良い ―『Midnights』レビュー | no+e

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