- リリース日:2021年3月5日
- 個人評価:★★★★
いぶし銀のアメリカン・ロックの魅力が光る逸品です
今回は2021年にリリースされたキングス・オブ・レオン (Kings Of Leon)の8枚目のオリジナル・アルバムの [ウェン・ユー・シー・ユアセルフ] (When You See Yourself)を紹介します。
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アーティスト紹介
アメリカの南東部テネシー州のナッシュビル出身のオルタナティブ・ロック・バンドの8枚目のオリジナル・アルバムです。
最近の数枚のアルバムは聴いていたのですが流して聴いてたました。
このアルバムで初めてちゃんと聴いてみて、こんな良いバンドだったのだと感じたことが今回、アルバム・インプレッションに取り上げた理由です。
2000年のデビュー時からもう23年も不動のメンバーというのも今時のロック・バンドでは珍しいです。
不動のメンバーといえばU2あたりを思い浮かべますが、一人一人のメンバー個性によってバンド・サウンドが確立されているという点では共通するものがあります。
メンバー間の相性が良く磨き上げられていったんだなと思ったら、それもそのはずというか、メンバーのケイレブ(vo&g), ネイサン(dr), ジャレッド(b)の3人兄弟と従兄弟のマシュー(g)の4人組で、姓がフォロウィルというまさに血縁で結ばれた兄弟バンドです。
宣教師の父に厳格な家庭で旅の中で育てられたようで、清廉さや大陸的なおおらかさが感じられるのもその辺りが影響しているのでしょう。
ナッシュビルと言えばカントリーミュージックをはじめとするアメリカ音楽の聖地なので、サザン・ロック等の古典的なルーツ・ロック要素もありますが、彼らのファースト・アルバムはとっぶりその雰囲気でしたが作品を重ねる毎にその要素は薄れてきます。
今では、ヴォーカルのカレブ・フォロウィルの男臭い声質と渋い声だけ聴くとカントリーやブルースを歌ってもハマるような泥臭さを持つヴォーカリストなのですが、ギターのクリーンさキーボードを効果的に使う程よくエコー感漂うサウンドもあり、サウンドのクリアーさで中和されていて不思議と全体的には泥臭さが感じられません。
全アルバムを聴いているわけではないですが、このバンドの良さを特徴付ける個性だと思います。
イギリスやアイルランドではファーストアルバムからチャートのベスト3に食い込むヒットを飛ばして、イギリス中心に欧州ではアルバムを出せば上位に入ってますが、大ブレイクのきっかけとなった4作目の[Only by the Night]からは本国アメリカでもブレイクを果たします。そして今や欧米のロック・ファンに信頼され支持され続けているアメリカのロック・バンドとなっています。
スタンダードなアメリカン・ロック特有の陽気さを持つ曲もありますが、前面には出てないですがカントリーやブルース等のルーツ・ミュージックの持つ郷愁とか哀愁というエキスが強く感じさせるも、ヨーロッパでのブレイクにつながっていったのではないでしょうか。
この手のアメリカン・バンドは日本では人気や知名度が出ないことがよくありますが、アルバム・デビューして間もなしの2003年のサマーソニックで初来日し、2007年にはフジロックフェスにも出演しているようです。
その後、欧米で人気が出過ぎてしまったのか、日本との人気の乖離が大きくなってしまったことが現時点の2023年まで来日公演がない要因なのかもしれません。
アルバム・インプレッション
一言でいうといぶし銀の輝きが魅力的な凛としたアルバムです。
プロデューサーは、イギリスの Markus Dravs(マーカス・ドラヴス)で、前作、[Wall (ウォール)]に続いて起用されています。
コールドプレイの [Viva la Viva],アーケード・ファイアの [The Suburbs]が代表作の人です。
アルバムタイトルは、「あなた自身を見るとき」というのは「自分自身を見るとき」ということでもあり、今作のインタビューでヴォーカルのジャレットは、「自分たちがいた場所に戻ろう、自分たちがもっと労力と考えを注いて音楽を作っていた時にね。」と語っています。
原点回帰と解釈できますが、ビジネスという部分を切り離して、今のキャリアを重ねたバンド自身が初心に帰りつつ、自分たちがリスペクトした人達がリスペクトしてくれる作品を作っているか、そして自分たちが好きになれるアルバムを作りたいという思いで作ったアルバムのようです。
ですので、キングス・オブ・レオンには明るいトーンのアルバムもありますが、今作は一聴すると地味な印象をあたえるかもしれません。
淡々としていますが、トータル通して曲が繋がりが心地よく、1曲1曲がしっかり存在感を示しています。
今作でもUS Billboard 200では、11位がピーク・ポジションですが、相変わらず、イギリスでは、1位を記録し、ドイツ等でもトップ10に入っていて、相変わらずヨーロッパで高い人気を博してます。
アメリカ的な音でありながらも、どちらかというと朝や夕方あたりの湿り気や静粛さを感じるのがヨーロッパでも支持されるのかと思います。
土着的でありながらも水晶のようなクリーンな音像で、エモーショナルかつ熱さも感じられるのが持ち味です。
個人的に一番好きな曲は、2曲目のPVにもなっている[Bandit]です。
クリアなエレクトリックギターが全編を通して印象的ですが、始めヴァースからベースがうねるグルーヴ感が曲の魅力を高めます。
ジャレッド・フォロウィルのスウィング感とグループ感の強いベースがこのバンドの魅力であることが痛感する曲です。
アルバムでは、スローやミディアムな曲が多いですがそれぞれの曲は聴きこむと気持ちが高揚していきます。
しっかりアメリカン・ロックしている曲もあり、10曲目の[Echoing]なんかも[Bandit]と並んでこのアルバムのハイライトとなる早めの三連ビートのアップテンポなロックナンバーです。
モノクロのPVも渋く、このバンドのカラーをよく現しています。
マイペースに自分たちに正直に活動しながら現在を生き、現在の音楽ファンに支持されるという姿勢がカッコよいバンドですね。
数回聴いただけの過去のアルバムももうちょっと聴き込みたくなりました。
参考サイト
スモール・イン・ジャパン等ともいわれるキングス・オブ・レオンですが、ネットで観るとちょこちょこと初期から彼らを聴いてるライターのレビューが見られます。
賛否両論ある作品のようですが、今作で改めてちゃんと聴いてみた私の感想は上記です。
レビューの中では音楽情報サイト TURN のレビューが自分の感想に一番近かったですね。
さて、実に5年ぶり8枚目のアルバムとなる本作『When You See Yourself』だが、彼らがまた一歩成熟して、どっしり構えられていることが分かる作品になっている。
愚直なまでに今の自分自身を表現するバンド、それがキングス・オブ・レオン | TURN
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