Pressure Machine (Deluxe) – ザ・キラーズ (The Killers)

Pressure_Machine-The_Killers
  • リリース日:2021年8月13日 (Deluxe版: 2022年3月25日)
  • 個人評価:★★★★☆

アメリカを代表する本格詩的ロック・バンドです

今回は2021年にリリースされたザ・キラーズ (The Killers)の7枚目のオリジナル・アルバムの [プレッシャー・マシーン] (Pressure Machine)を紹介します。

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アーティスト紹介

ザ・キラーズはアメリカ ラスベガス出身のオルタナティブ・ロック・バンドです。
2003年にデビュー・アルバム [Hot Huss (ホット・ファズ)]が全世界で700万枚のセールスを記録し一躍人気バンドとなります。
デビューの2000年代前半にイギリスから火がついてトップ・バンドに上り詰めたという点では、ザ・ストロークス、キングス・オブ・レオン辺りと共通点があります。
音楽性や個性という点では、それぞれのバンドが違った魅力を持っています。

ザ・キラーズは特に、本作で7作連続全英アルバムチャート初登場1位を獲得するといった何故にそこまでというUK人気です。
どちらかというとザ・キラーズはニュー・ウェイブ的なサウンドからスタートして、作品を重ねるごとにアメリカのスタンダードなロックを志向しているように思います。

オルタナティブ・ロックと分類されつつもエモーショナルでどこか叙情的なメロディラインと、キーボードをフィーチャーしたニュー・ウェイヴ・サウンドがスタート地点ですが、アコースティックやトラディショナルな楽器も取り入れて来ており、アメリカの大陸的な空気が感じられるのが特徴です。
そんなイギリスらしさとアメリカらしさの絶妙なバランスが取られているところがUK人気の要因でしょうか。

ザ・ストロークスも日本でも人気はあるかと思いますが、このザ・キラーズは通好みというイメージでしたが比較的コンスタントに日本公演をやっているようで、2018年には5作目の[ワンダフル・ワンダフル (Wonderful Wonderful)]のツアーとして日本武道館公演をしているのには驚きました。
キングス・オブ・レオンは良いバンドなのに日本の知名度や人気はちょっと勿体無いなぁと感じます。

アルバム・インプレッション

2021年のアルバムででアメリカの風景が目に浮かぶように一番感じられたアルバムがこのザ・キラーズ 7枚目のアルバム[Pressure Machine]です。

アルバム・ジャケットでは鉄条網が目前に写っていて、荒れ地の先に大きな十字架が3本立っており、その奥には山がそびえるという無機質な人工物と手入れのされていない土地と自然の景色が映る少し荒涼とした雰囲気を与えます。

憧憬とか郷愁とかに近い光景とか景色なのですが、歌詞や音の感触からそれを明るい言葉で現わせられないような荒涼とした感覚があります。

ザ・キラーズは、アメリカはラスベガス出身のロックバンドですが、この[Pressure Machine]は、ヴォーカリストでありバンドの曲のメインの作詞・作曲を手がけるブランドン・フラワーズは、ユタ州のニーファイという小さな街で8歳から16歳までの10代の大半を過ごしています。

ニーファイという町は信号機もない、ゴム工場や小麦畑がある密接なコミュニティのようで、当時の彼に影響を与えた人々の記憶や話をベースにブランドン自身が10代の頃に見て、感じてきた想いとアメリカの小さな町の日常的な現実を物語った作品となる。
またアルバムもニーファイでレコーディングされています。

彼が過ごした小さな町の、些細なことも含めて今や人々の心の中に擦り傷のように残っている現実を歌にした作品になってます。

私自身は生まれも育ちも東京なので、アメリカの郊外の広大な土地の開放感とともにどこか荒涼としたイメージを持ってしまい、ラスベガスからネフィという田舎町に引っ越したブランドンが感じていたことは全く想像だにできないですが、このアルバムを聴くと10代に感じた殺伐とした思いや寂しさ・やるせなさといった気持ちがやるせなさとともに懐かしい気持ちも想起させれられます。

トラック・インプレッション

ここからは印象に残った曲紹介です。

1曲目の[West Hills]は、町の住人と思われる何人かのインタビューから始まり、人々の現状とこの町の平和な様子はなしてますが、本編の歌詞にはオピオイドという麻薬中毒者の話が含まれてます。

2曲目の[Quiet Town]は、明るめのロック調ですが、この町では2,3年に一度、鉄道に轢かれる列車事故が起こっており、時には人生多望な若いカップルが事故にある等、町に暗い影を落とすしています。

そんな中でも小さな町で人々が悲劇を乗り越えながらも協力をしながら日々を送っている様子が描かれてます。

6曲目の[Runaway Horses]は、フィービー・ブリジャーズをフィーチャーした曲であり、フィービーの柔らかいヴォーカルと相まって静かなアコースティック曲でありながらもこのアルバムの中で良いアクセントとなる一番静の部分の役割を果たしてます。

10曲目の[Pressure Machine] はタイトル・トラックで、労働者階級家族の決して裕福ではない生活の中での変化することのない日常やささやかな幸せが抒情的で感情を抑えながらも歌心のあるヴォーカルで歌われていて、アメリカの日常を切り取ったようなシンプルながら穏やかな家族の様子が感じられるPVが秀逸です。

The Killers – Pressure Machine (VIDEO)

2022年3月25日には、Pressure Machineの3つのトラックの7つの再考されたバージョンをフィーチャーしたアルバムのデラックス エディションがリリースされてます。

特に[The Getting By II]はオリジナルの内省的なメロディ・歌詞とは異なるアッパーなサウンドで希望的な色を持つ曲となっており個人的にアルバム通して気に入っている曲です。

その他の曲もオリジナルとは異なる再解釈がされた全く別の曲になっています。
[West Hills II][West Hills III]共に歌詞はほぼオリジナルと同じですが、 [West Hills III]は、オープニングトラックのゴスペル調であり、[Runaway Horses II]では、フィービー・ブリジャーズがミックスから外されています。

アルバムトータル印象

ブランドン自身もNME誌でのこのアルバムの中の[Quiet Town]でのインタビューの際に、「ニーファイにいる時の記憶の多くはあたたかいものだけど、恐怖や大きな悲しみに結びつくものに心を動かされたんだ。バンドを始めた時よりも今のほうが理解できる。そして、僕の育った小さな町の人生や物語に正しいことをできればと思ったんだ」という通り、暗の部分とともに、人の優しさや温かさに触れて、今の彼を形成した重要な日々だったことへの恩返しとして作られたアルバムのように思われます。

私が初めてザ・キラーズを聴くきっかけとなったのが、ザ・キラーズのアルバムでなく、ブランドンの[フラミンゴ (Flamingo)]というソロ・アルバムでした。
決してパワフルな歌い方をするシンガーではないが、繊細で丁寧に優しいメロディの曲を歌い、芯の強さを感じるヴォーカリストでありアルバムでした。

それから何作かザ・キラーズのアルバムはリリースされましたが、このアルバムがザ・キラーズの本質を全て示している訳ではないと思いますが、このアルバムはブランドンをフィーチャーしたザ・キラーズのプライベート部分のアルバムということで、翳りの中にも力強くも優しく、明るい希望が見える作品となっており、ザ・キラーズの影というか裏の代表作になるようなアルバムだと思います。

参考サイト

レビューを拝見したのがバンドの前作[Imploding The Mirage]から今作[Pressure Machine]への歩みについて触れられた「新譜レビューをメインとした音楽ブログ 太陽と水」のものが良かったですね。
アーティスト愛に溢れているという感じでしょうか。

迷走していたように思われた方向性から一転、原点回帰した前作「Imploding The Mirage」から、今作はどのような方向に進んだのか。今回はThe Killersの軌跡、そして「Pressure Machine」について少しばかり書いていく。

The Killers 「Pressure Machine」原点回帰の前作から1年、色濃く出た新たな一面 | 太陽と水

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