- リリース日:2020年2月19日
- 個人評価:★★★★★
どこまでもナチュラルが故のアイロニック
ヘイム (Haim)は、アメリカはカルフォルニア州ロサンゼルス出身のバンドです。
メンバーは、長女のエスティ(ベース)、次女のダニエル(ギター)、三女のアラナ(ギター,キーボード)のヘイム3姉妹がメンバーです。ダニエルがリード・ヴォーカリストです。
音楽好きの両親の元で育ち、少女時代には家族でバンドを組んで地元でのチャリティコンサート等でも活動していて、小さい時から音楽好きの姉妹だったようです。
その頃から音楽を演奏するのが当たり前のようにバンドを組んだり、姉妹中心に活動していたようです。
そして、2013年のメジャー・デビュー・アルバムから数えて三作目となるのが、今回紹介する[Women in Music Pt. III] になります。
このバンドは母国アメリカよりも、ロックミュージックがチャートに入ることが多くなったイギリスでブレイクしており、このアルバム含めてデビュー・アルバムから3作連続ナンバー・ワンとなっています。
アメリカの音楽メディア[ピッチフォーク]やイギリスの大手新聞[ザ・ガーディアン]のメディアは年間ベストアルバムトップ10に選出して、日本でもロッキン・オンの2020年ベストアルバムのベスト15位以内に選出されています。
私も2020年の各メディアの良い評価がきっかけで聴きましたが、この手の評価が自分の好みにフィットすることはフィフティフィフティ位なのですが、これは私にとって2020年出会えて良かったと感じる嬉しいバンドでありアルバムになりました。
アルバム1曲目の[Los Angels]は故郷のロスアンゼルスをちょっと皮肉を交えながらも離れたいと思うけどやっぱり心地よい場所だと歌っているようであり、軽やかな短いサックスのフレーズから始まり、スカっぽいリズムでいい感じに力が抜けて軽やかな曲になってます。
コーラスが綺麗でメロディアスで心の根っこから元気がでるようなポップチューンであり、曲それぞのスタイルは違いながらもこの心地よさはアルバム最後まで続きます。
5曲目の[Don’t Wanna]は酷いことをされても恋人を諦めたくないという感情を、相変わらず軽やかなメロディで嫌味なく歌われています。このフック満載の曲が詰まったアルバムの中でもついつい口ずさんでしまう心地よいポップ・ソングになってます。
駐車場をゆっくりのんびり3人で歩いてると思ったら、少しずつ早歩きになり、急に走り出したり、疲れて止まったりと、なんでもない行動なのですが、何かファニーなPVになってます。
11曲目の[Man From The Magajine] もPVが秀逸な楽曲です。この歌詞の男性ジャーナリスト等から、女性アーティストである彼女達にセクシャルだったり小馬鹿にするような質問にうんざりしている様子と、PVでのダニエルがソーセージショップの店員になって淡々と男性の注文に機械的に応えていき、[Next!]と次の客に言い放つ日常的に何処かにありうるような映像が皮肉でありながらもなんかカッコ良い印象を与えます。
またこの Expanded Editionは、このアルバムリリース前の2019年シングルリリースされたり、コラボ曲が入っており、本編のおまけとして扱うことが出来ない良い曲が収録されています。
もっと言ってしまうとこのエキスパンドがあることでこのアルバムが完成形になってより魅力的になっているくらいです。
17曲目の[Halleluja]はアルバム通しての唯一のバラードタイプのスローチューンです。
3人の声が姉妹なので似ているのですが、ヴァースで順番にソロヴォーカルを取る清廉な名曲になっています。今まで姉妹を見守っていてくれた今はいない大切な人に贈られたような曲になっているように聴こえます。
とにかくメロディと歌声に心が洗われます。歌詞も含めてアルバムで一番好きな曲でこれでリストの個人評価満点のファイブスターが確定しました。
18曲目にシングルにもなった[The Summer Girl]が収録されています。こちらもPVもこのバンドのちょっと緩めの魅力が溢れている秀逸な出来になってます。コートやセーターを着込んだダニエル達が最後には上半身ビキニ一枚になってしまうのですがいやらしさが無く、曲同様に素のカッコ良かと爽やかさが魅力的なPVになってます。
ノスタルジックなアメリカン・ポップ・ミュージックの陽性な感じが、様々な楽器や音楽を取り混ぜながら今のサウンドとして昇華され、表面的にはどこまでも軽やかに爽やかに展開されています。
ダニエルのリード・ヴォーカルは癖がないながらも綺麗でありながら芯のしっかりした声で、サウンドにマッチしています。
どこまでも素で飾らずナチュラルながらも、歌詞には繊細さや、辛辣にアイロニックが込められており、毒性も含んでいるところがこのバンドの魅力です。
また三姉妹が少女自体から好きな音楽への愛に満ちあふれているところが、アルバム全体を通して感じられ、一聴するとサラッと聞き流してしまいそうですが、実は一筋縄ではいかない姉妹達というのがブレイクしている要因だと思います。
この感想を書き終えた後、読んだ[Mikiki Mikiki]にちょうど良いコンパクトさにバンドへのインタビューとレビューが載っています。いくつかの曲に彼女達のコメントもあるので興味を持った方は読んでみることをお勧めします。ここでダニエルはアルバムについてこう語ってます。
「アルバム全体のコンセプトはなかったわ。私たちはただ、心から語っていただけ。コンセプトがあったとしたら、〈考えすぎないで、自分の心に従おう〉ということだったと思う。リリースが延びたことを含めても、私たちはこのアルバムは少しふざけていておもしろい作品だって感じていたから。そうやって、物事をあまり深刻に捉えすぎないようにしているの。それは変わってないと思う。私たちはいまでもふざけ合っているし、大変な状況でも楽しもうとしている。そうやって楽しもうとしないと、クレイジーになってしまう気がするから。」
Mikiki Mikiki – ハイム(Haim)『Women In Music Pt. III』カリフォルニアの3姉妹が過去最高に率直でオープンな傑作を語る
この先、どのような変化を見せていくのか予測がつかないところもあったりしますが、どっちにいっても面白いことをしてくれるのではないかという期待感が持てるバンドです。
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