SOUR – オリヴィア・ロドリゴ (Olivia Rodrigo)

sour-olivia-rodrigo
  • リリース日:2021年5月21日
  • 個人評価:★★★★

正統派女性シンガー・ソング・ライターの未知数さを感じるデビュー・アルバムです

今回は2021年にリリースされたオリヴィア・ロドリゴ (Olivia Rodrigo)のファースト・オリジナル・アルバムの[SOUR (サワー)]を紹介します。


アーティスト紹介

私にとって2021年のナンバーワン新人アーティストはこのオリヴィア・ロドリゴさんです。

アメリカのカルフォルニア出身で2023年現在で20歳、このファースト・アルバムのリリース時は18歳というフレッシュな新人女性シンガー・ソング・ライターです。

子供の頃から音楽が大好きで、ボーカルレッスン、ピアノレッスンを始めて作詞・作曲もこの頃から始めているようです。
ローティーンの頃からディズニー・チャンネルで女優としてデビューをし、ミュージカルにも出演していました。
ディズニーが認めたタレントという事もあり、歌唱力はさすがです。

他のアーティストと比較するのも何ですが、ディズニー等キッズ向けアイドル的なデビューという点で、マイリー・サイラスやセレーナ・ゴメスあたりが思い浮かびますが、シンガー・ソング・ライターという点と、自身の経験を歌に込めたり、ストーリー性を持った歌詞を作るという点、タイプは違っても透明感のある美少女というところがテイラー・スウィフトの次の世代のスターという印象を受けます。オリヴィア本人もテイラーの大ファンのようです。

ただ、テイラー・スウィフトのようなデビュー当初からアメリカのエンターテイメント界を背負った歌姫というただずまいではなく、自然体のティーン女性シンガー・ソング・ライターという雰囲気をもっています。

アルバムジャケットの表情からもそんな印象をうけますね。
テイラーのファーストアルバムのお姫様然(カントリー出身なので、ちょい田舎たい感じもありますが)としたジャケットと比べると、オリヴィアはフェイスペイントで遊んで斜に構えた感じと、ちょっとだけ悪ぶっている感じがごくごく普通の女の子っぽく感じます。

ブロンドのアメリカン・ビューティーのテイラーと黒髪のアジアン・エキゾティック・テイストを持つアメリカン・ビューティーのオリヴィアという対な感覚も面白いです。

アルバム・インプレッション

アルバム・タイトルの[SOUR(サワー)]は直訳すると様々な意味を持っており、一般的には味覚としての「酸っぱい」となりますが、ネガティヴ表現の「意地の悪い、ひねくれた、不機嫌な、気難しい」という意味も持ちます。
オリヴィア自身は前者ではなく、10代は良いことがなかったとのことで後者の意味でこのタイトルにしたようです。
まさに多感な今のZ世代のティーンエイジャーの負の部分の感情も込められているアルバムのようです。

プロデュースはアメリカのダン・ニグロという方がメインで担当していて、コンポーズもオリヴィアとの共作になっています。

アルバムのサウンド自体は至って正統派なポップ・ロック・サウンドの曲が多く、アルバムを通して捨て曲がなく、どの曲もメロディが素晴らしいです。

アルバムは1曲目の意表を突くちょっとグランジっぽいリフが印象的なパンキッシュなサウンドに乗せて、17歳という、大人が人生の黄金期であるということを否定するかのごとく不安や自己嫌悪の気持ちを吐露する[Brutal]から始まります。

2曲目の[Traitor]は彼氏の浮気の歌だったり、アルバム・タイトル通り綺麗な恋愛の歌にはなってません。

このアルバム一番のオリヴィアの代表曲でありこのアルバム最大のヒット曲である3曲目の[Driver’s License]はバラード・チューンで、ハイティーンの女の子が憧れの男性との破局と取ったばっかりの運転免許証を絡めて歌われる失恋ソングです。
相手の男性が歌の主人公であるオリヴィア自身なのでしょうか、そんな破局を気に求めてないくだりと未練たっぶりの歌詞に10代の女の子の傷つきやすいところが胸に刺さるのがヒットの要因でしょうか。
この曲を聴くと、私のような普通のおじさんにも20代前後の頃に免許証と自分の車を手に入れて大人になってちょっとした優越感を得たと思っても、恋愛はうまくいかなかったことがあったことを思い出したりします。

4曲目の[1 Step Forwards 3 Step Back] はピアノをバックにしたスロー・チューンで彼女が子供の頃、何回も聴きまくって今のソングライティングの素となると言っているキャロル・キングの[Tapestry(つづれおり)]の影響を強く感じるアコースティック・チューンになっています。
アルバム・ラスト11曲目の[Hope You Are OK]もそんなタイプの曲です。
オリヴィアの経験上の歌なのでしょうか、彼女が親近感を感じた悲しい生い立ちのもと、子供時代を過ごした友人に対しての応援歌のような優しい歌です。

基本的にポップ・ロック・ソングが中心ですが、それらの曲の間にこのようなアコースティックだったり、ちょっとオルタナティヴな曲をちりばめているところが良いアクセントになっており、10代にして幅広い才能を感じます。
最近のアーティストのレヴューでは何度か書いている記憶がありますが、バックのプロデューサー等のブレーンのバックアップもあるのでしょうが、彼女のようなZ世代のアーティストにはジャンルなんてものは感じず、自分が好きなものを自分なりに消化し作品にしているのでしょう。

80年代にリリースされてもヒットするような魔法のようなドリーミーなポップチューンである5曲目の[Deja Vu]もグッドです。この曲も軽い元カレを新しい彼女とのデートで同じことを繰り返して楽しんでいることをデジャヴと皮肉っている失恋ソングになってます。
そして、アップ・テンポの6曲目の[Good 4 U]まで様々なスタイルのメロディが素晴らしい曲が心地よい曲順で並び構成されてます。

7曲目以降はちょっとスローだったりアコースティック色の強い地味な曲やオルタナ的な曲が続きますが、この後半も今後のオリヴィアの成長に影響を与えそうな興味深い曲になっています。

歌詞は10代の女の子ならではの等身大かつ大胆なところもあるぶっちゃけたラヴソングが中心ですが、内省的な繊細なところと若さが比較的わかりやすくストレートな歌詞にされています。
フィリピン人の父親とアメリカ人の母親を持つアジア系というマイノリティであるところも彼女のアーティストとして個性を特徴づけているような気がします。

オリヴィアがこの先どのような音楽的に変化をしていくかは「?」ですが、カントリーからダンス・ミュージック、オルタナ・フォークからエレクトロなど行けるところまで音楽の幅を広げていくテイラーとは違って、どちらかというとこのアルバムで聴けるポップ・ロック感とフォーキーな人間臭いところを突き詰めていくような気がしています。

2023年には2枚目のニュー・アルバムもリリースされるようなのでどのように成長していか期待大ですね。

テイラーがもうスーパースターになった今、オリヴィア自身も既にニュー・スターですが、まだまだ未知数であるだけに、久しぶりに今後の成長・活躍を見ていきたい新人女性アーティストが出てきたのが2021年の私のミュージックライフの収穫でした。

参考サイト

さすがに美少女ニューカマーなので、日本でも結構紹介が多いオリヴィアです。
本作[SOUR]のレビューも私もよく閲覧させていただいている[Udiscovermusic.jp]が詳しいです。
オリヴィアのフォトが多いのも嬉しい限りです。

2021年5月21日に発売されたデビュー・アルバム『SOUR』が、2021年最大の初週売り上げで全米1位を記録、全英チャートでもアルバムとシングル同時1位の最年少記録を更新するなど、18歳にして全世界で大成功を記録しているオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)。

オリヴィア・ロドリゴのデビューアルバム『SOUR』全曲解説:今年最大ヒット作の普遍的歌詞世界 | Udiscovermusic.jp

ちょうど[SOUR]リリース時にアップされたインタヴューも併せて読むとこのアルバムとオリヴィアというアーティストをより理解できると思います。

Apple Musicで公開された彼女自身が選曲したプレイリストの楽曲や、彼女が影響をうけたアーティスト、両親との関係などを語ったインタビューの模様を抜粋してお届けします。

2021年最大の新人、オリヴィア・ロドリゴがApple Musicで語った影響を受けた音楽や親との関係 | Udiscovermusic.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました