- リリース日:2021年2月5日
- 個人評価:★★★★☆
アメリカン・ロックの巨人の全ロックファンに訴える本領発揮作です。
今回は2021年にリリースされたフー・ファイターズ (Foo Fighters)の10枚目のオリジナル・アルバムの [メディスン・アット・ミッドナイト] (Medicine At Midnight)を紹介します。
アーティスト・アルバム紹介
説明不要の1994年から元ニルヴァーナのドラマーのデイヴ・グロールを中心に活動するアメリカを代表する大物ロックバンドの結成25周年、且つ10作目という切りの良い記念すべきアルバムです。
もはや本国アメリカではグラミー賞受賞歴も多くロックの殿堂入りも果たし、国民的ロック・バンドであり、世界中のロック・ファンが信頼するバンドとなっています。
前作の[Concrete and Gold]で組んだベテランプロデューサーのグレッグ・カースティンと再度手を組み、バンドとの共同プロデュースとなっています。
相変わらずアメリカや主要なヨーロッパの多数の国々でナンバーワン、もしくはトップ10に入るヒット作となってます。
私は彼らのアルバムは7作目の[ウェイスティング・ライト(Wasted Light)]から聴いてきましたが、ブログ投稿ということもあり、しっかり何度もアルバムを聴いたのは今作が初めてかもしれないです。
骨太でハード&オーガニックなロック・バンドという、もやっとした印象しか持ててなかったのですが、2020年のコロナウィルスのパンデミックで世界中が混乱している時にリリースされた彼らの5作目のアルバム[ワン・バイ・ワン(One by One)] に収録されていた [Time Like These] のカバーが2021年のフェイバリット・ソングとなったことから改めて興味を持ちました。
この曲は、イギリスのBBCが、パンデミック真っ只中に、ステイホーム運動をサポートする活動の一環として[The Stay Home Live Lounge] と題したイベントとして、セッション形式でカバーされた曲です。
デュア・リパやコールドプレイのクリス・マーティン他、豪華ミュージシャンが自宅から1フレーズ位ずつ歌っていき、フー・ファイターのデイヴ・グロールとドラムのテイラー・ホーキンスも参加しています。
スピーディーな原曲をアコースティックで柔らかく温かいアレンジにし、「こんな時こそ生きることを学ぶんだ、こんな時こそ、与えること、愛することを学ぶんだ」という迷いながらも前向きに、というメッセージがコロナ禍の混乱時にはこれ以上ピッタリくる曲はないと思える名曲だと感じました。
クリス・マーティン(コールドプレイ)、デュア・リパ、リタ・オラら豪華アーティスト24組がFoo Fightersの名作「Times Like These」のカヴァーを披露!デイヴ・グロール本人も歌唱参加!英BBCの呼びかけで新型コロナウィルス対策チャリティシングルをリリース。
フー・ファイターズ | sonymusic.co.jp
アルバム・インプレッション
[Time Like These]の説明が長くなりましたが、アルバムの感想です。
デイヴ・グロールのインタビューでは今作はパーティロックとして作ったというように言ってますが、私の世代ではパーティロックというと80年代のヴァンヘイレンを始めとした完全に頭を空っぽにして聴ける猛るハードロック勢を思い浮かべますが、さすがにフー・ファイターズはそうはならず、バンドのオリジナリティ、底力を感じる彼ららしい陽性ロック・アルバムになっています。
曲によってはR&Bやファンクっぽく、全編を通してうねるグルーヴ感を持つ曲が多いですが、しっかりとフーファイらしいロックになっていて、大人の陽性パーティロックという感じです。
もうこのバンドをポスト・グランジという言葉で捉えるリスナーはいないと思いますが、力強くも、良い意味で肩の力を抜いてバンド特有のヴァイブに身をまかせて楽しんで制作された様子が浮かんできます。
1曲目の[Making A Fire]は、「俺が火を起こすから点火するぞ。覚悟を決めろ」といケツを叩かれるようなファンキーなロックチューンでオープニングに相応しい曲だし、2曲目の[Shame Shame], 3曲目の[Cloudspotter]はダンサブルなグルーヴ感の強いミディアムテンポのロックソングとなっており、アルバム前半でしっかり掴んできます。
個人的に気に入った曲は4曲目の[Wating On A war] です。
ガキの頃におもちゃの銃で無邪気に遊んでいたり、人を出し抜いてトップに立とうなんて考えずに、皆と楽しく過ごしていた子供時代。
ラジオから流れる音楽に夢中になっていた頃。そんなデイヴのガキの頃の思い出を、こんな普通で平和な生活以上なことはあるのか、という問いかけと今の子供達を憂う気持ち。
実は裏では政治的な事情から戦争が起きることに不安を持ちながら今という時代を暮らしているという歌詞は、アメリカが関わった戦争や、今のロシア・ウクライナ戦争への反戦歌のような曲になっています。
戦争を待っていることよりもっと良いことがあるんだというメッセージが感じられます。
アコースティックでノスタルジックな歌詞と曲調から始まりますが、後半は力強くスピーティーな展開となっていくところがカッコ良いです。
この曲はデイヴが娘さんを学校に送っていった時にも感じたことも曲の着想になっているようです。
アルバム後半に差しかかる、6曲目の[No Son of Mine],7曲目の[Holding Poison]はハードドライビングするスピード感があり、バラエティ豊かでほぼ全編気持ち良いロック・ソングになっています。
唯一、8曲目の[Chassing Birds]がアコースティック曲となっていて、小休止させてくれますが、こういった曲でもフー・ファイターズらしい優しさが感じられるのがデイヴの声とヴォーカリストとしての魅力です。
ラストの[Love Dies Young]あたりが一番ポップでパーティロックらしいです。PVでは全員髭面のバンドメンバーが女装してシンクロナイズドスイミングをするという、かなりバカバカしく面白いけどグロさ(ゲロさ?)のある仕上がりになっていながらも、歌詞は「愛は早く死ぬんだ。無くなってしまえば戻ることはない」なんてシニカルな感じなのが面白かったりします。
36分という時間にメリハリのあるファンク、ダンス的なロック・チューンは一気に聴けて、それがこのアルバムの心地良さになっています。
そこは楽しく聴けるパーティ・ロックとなのですが、実は皮肉や抽象的な部分のある歌詞は聴き手に判断を委ねるところもあり、流石、今を生きるロックの巨人 フー・ファイターズと感じさせられます。
らしさと安定感・安心感はしっかりあるのですが、レジェンドであることを拒否するかの如く枯れた要素が一切なく、勢いと若さがしっかり感じられる現役感たっぷりのアルバムになっています。
参考サイト
探した限り日本の音楽サイトでは、LikeDis Music News のサイトにデイヴ・グロールのこのアルバムについてのインタビューが掲載されてました。
やっぱり以下のデイヴのコメントがこのアルバムの楽しさに繋がっています。
「10作目にして25周年だったから、数年前からフレッシュなことをやりたいと決めていたんだ。いろんなタイプのアルバムを作ってきたけど、アコースティックなものもやったし、パンク・ロックなものもやったし、ミドルテンポのアメリカーナもやった。いろんなものに寄ったアルバムを作ってきたけど、それで直感的にメロウな大人のアルバムを作る代わりに、『くだらねえ。パーティー・アルバムを作ろう』と思ったんだ」
Foo Fighters、新作『Medicine At Midnight』について語る | LikeDis Music News
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