- 公開日:2022年7月1日
- 159分/原題:Elvis/配給:ワーナー・ブラザース映画
- 鑑賞日:2023年6月27日
エルヴィスの音楽というか半生の一端を知ることができます
今回は2022年7月に公開された映画 [エルヴィス (Elvis)]の紹介です。
映画紹介
今回は2022年7月に公開された映画 [エルヴィス (Elvis)]の紹介です。
監督は[ロミオ&ジュリエット(1996)],[ムーラン・ルージュ(2001)]で有名はバズ・ラーマン。
主演のエルヴィス役はオースティン・バトラー、そしてこの映画のキーマンとなるエルヴィスのマネージャーであるパーカー大佐役をトム・ハンクスが演じてます。
この映画は実は昨年2022年の8月に映画を見にいったのですが、体調があまり良くなく半分寝落ちしてしまったので、Blu-ray盤をレンタルして改めて2度目(1.5回目?)の視聴です。
映画は言わずと知れたキング・オブ・ロックンロール、ロックの創世記の象徴、ロックというかポピュラー・ミュージック全般に偉大な足跡を残したエルヴィス・プレスリーの半生を描いた映画です。
と書いてますがエルヴィス世代となるとおそらくもう80歳前後からそれ以上の方達となるはずですので、当然私はエルヴィス世代ではないです。大ヒット曲の一部を知っている程度ですね。
一般的には歴史上の偉人の伝記映画という捉え方でしょう。
やはりビートルズを境に境界線があり、ロックの神様エルヴィスですが、この時代の音楽はオールディーズという言葉で考えてしまいがちでロック・ファンは見落としてしまう人、時代だと思います。
本国アメリカでは恐らく時代を超えても誰もが知っているスターなのでしょうが、日本では遠いアメリカのスターなので、ビートルズ以降のベテラン洋楽ファン、音楽(洋楽)好き、ポピュラー・ミュージック歴史を知りたい、と思って見た人が多かったのでは無いでしょうか。
私自身もそんな一人です。
私が知りうるエルヴィス経歴については、アメリカ中の女性を熱狂させ、まだ人種差別制度が残るアメリカでのアフリカン・アメリカンのゴスペル、ブルース、R&Bとカントリーを融合してロックンロールの基礎を築いて社会現象となったデビュー時、徴兵から帰ってきた後の映画スター時代、ラスベガスとアメリカ本国でエンターテイメント・ショーを繰り広げた晩年時代といった散発的な情報を把握している程度です。
映画インプレッション
エルヴィスの経歴を書いていっても他のサイトに詳しいものは多数あるので、感じるままにあまりネタバレ無いように映画の感想を書いていきます。
この映画で特徴的なのはパーカー大佐が第二の主役のように描かれている点です。
音楽スターの栄光と挫折が描かれているのは良くあるパターンなので、そこをヒューマン・ドラマとして描くためにパーカー大佐とエルヴィスを関係性を軸にフォーカスしたストーリー展開となってます。
やはりドラマありきで作られた映画だとすると、溢れんばかりの才能を持ちながらも、時代やマスコミ・政治に翻弄された悲劇のヒーロー・エルヴィスという描き方にならざるを得なかったのでしょうか…
前半の教会での少年エルヴィスとマヘリア・ジャクソンとの出会い・邂逅、貧しいブラック・コミュニティで育った白人少年がゴスペルやR&Bを自身の血と肉としてパフォーマー・シンガーとして社会に衝撃を与える様子、B.B.キングやリトル・リチャードとの交流が描かれているところは、エルヴィスが一番神がかっていた時期が表現されており、古き良きアメリカ的な映像も併せて興味深かったです。
映画の中でリトル・リチャードのパフォーマンス(本人映像では無いですが)があるのですが、この辺りもエルヴィスやこの時代の中での今はレジェントとして語られるブラック系シンガーが、今の時代はオールディーズとなっていても、この時代にいかに先鋭的でセンセーショナルでアヴァンギャルドだけど大衆的な人気を勝ち得たのかが擬似体験に近い形で感じ取られ、凄くよかったです。
この時期がエルヴィスの真骨頂だと思うのですが、1時間足らずで描かれており、できればこの部分にもっとフォーカスした作品にして、中期・後期はサラッと描いて貰えると音楽ファンとしては良かったのですが、シンガー・アーティスト・エルヴィスの輝ける時代や瞬間を中心とした描き方だとやっぱり興行としの映画として成立しないのでしょうね。
ただ、中盤での[If I Can Dream]の熱唱はソウル・シンガー・エルヴィスとしての凄さを感じられますし、後半でのラスベガス・ショーでの[Suspicious Minds]なんかも曲の良さとパフォーマンスが最高潮に達するシーンもあったりして、ここは私のようなエルヴィス初心者にもエルヴィスというスターが持っているイメージがしっかり伝わり、やはり凄い人だったのだなと堪能できました。
ここら辺は私のようなエルヴィスを断片的にしか知らない人間にもエルヴィスさしさ、イメージを伝えるオースティン・バトラーの演技力、パフォーマンス力が光りますね。エルヴィス自身が伝記映画のために出演しているに近く感じて映画通して違和感がほとんどなかったです。
ロック・スターを題材とした映画を、スターに付き物のドラッグ・女性(恋愛)・ショービズ界の裏舞台を栄光と挫折として描いていく作風は音楽ファンにとってはもうちょっと工夫してもらえないとと思ってしまいます。
以前紹介した[ホイットニー・ヒューストン (Whitney Houston) I WANNA DANCE WITH SOMEBODY]はその路線なのですが、ヒット曲てんこ盛りでホイットニーの歌唱力をしっかり堪能できた点が良かったです。サントラも良かったです。
ボヘミアン・ラプソディは本当に名作だったのは、フレディ・マーキュリーという人間の個性と意思を描きつつ、フレディを中心としたクイーンというバンドの音楽をしっかりと伝えたところだと思います。
ドキュメンタリーで考えると、デヴィッド・ボウイの[ムーンエイジ・デイドリーム MOONAGE DAYDREAM]なんかはある意味、画期的にボウイの本質の一面を表現できた映画なんだったなぁと思い返してしまいました。
ロック・ファンとしてはこの映画は、ある意味ロック創世記の一端を知る単なるとっかかりであり、これを見て、エルヴィスを中心としたブラック・ミュージックとロックの邂逅、ロックンロールの誕期をロックというよりポピュラー・ミュージックの歴史として知りたいという人がいれば、ドキュメンタリー映画が見てみたいですね。
と思ったのですが、ちょっとググった限りではあまりこれぞというものが探せませんでした。
音楽自体はサブスクでいくらでも聴けるのですがこういった時代の空気を感じるというのは良い映像と音楽が交えられたドキュメンタリーが最適だと思ったのですが…ちょっと残念です。
気持ちが冷めないうちにもうちょっと探してみようかと思います。
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